1997 Fiscal Year Annual Research Report
都市でのインフォーマルな経済活動に関する近代日本と西アフリカとの比較研究
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09780122
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠城 明雄 九州大学, 文学部, 助教授 (00243866)
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Keywords | インフォーマルセクター / 西アフリカ / 近代日本 / 小規模経営 |
Research Abstract |
本年度は以下の二点について主に研究を実施し、新たな知見を得た。 1.西アフリカのガーナの主要都市におけるインフォーマルセクターに関する先行研究や資料の検討を行った結果、近年では自動車修理業や縫製業などの小規模製造業のための工業団地の建設など国家主導によるインフォーマルセクターの育成政策が実施されている一方で、主に都市移住者の手による零細な食料品販売などの経済活動に対する統制の強化が進んでおり、国家との関係においてインフォーマルセクターの「二極分化」といる現象が生じていることが明らかとなった。またコートジボワールなどのフランス語圏の諸国においては、伝統的な職人層の活動の再評価や近年発展途上国で広くみられる「都市農業」の活動などがインフォーマルセクター研究として論じられていることがわかった。同じ西アフリカ諸国においても英語圏の研究とフランス語圏の研究において視点が異なることが明らかとなり、来年度はこうした相違に留意しつつさらに先行研究の検討を進め、両者間の比較考察を行うことが課題となる。 2.近代日本における「都市雑業層」ないしは小規模な零細企業の研究についての資料収集とその分析を実施した。その結果、日露戦争以後にガーナに関する研究で確認されたインフォーマル部門の二極分化と類似の現象が生じ、この時期に国家と経済との特殊日本的なつながりが形成されたと考えられることが明らかとなった。 来年度では以上のような知見を踏まえて、ヨーロッパ諸国に植民地化されなかった日本と植民地化されたアフリカ諸国についてインフォーマルセクターの経済活動全体における位置の類似点ないし相違点についてより具体的に明らかにする予定である。
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