1997 Fiscal Year Annual Research Report
教員養成カリキュラムにおける即興・創作の比較研究-日独比較音楽教育からの考察-
Project/Area Number |
09780174
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中地 雅之 岩手大学, 教育学部, 助教授 (30250640)
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Keywords | 音楽科教育 / 教員養成 / カリキュラム / 即興・創作 / 比較教育 |
Research Abstract |
本年度は、教員養成カリキュラムにおける音楽的即興・創作を、ピアノ基礎技能と国語科との合科的アプローチの2面より探求・試行した。 (1)ピアノ基礎技能における即興・創作 小学校教員養成課程におけるピアノ基礎技能では、各種教本の演奏・学習が主となるため、即興的な要素は軽視される傾向にある。しかし、簡易伴奏法として教育実践で有効であるコードネ-ム伴奏法は、リズム・音型・前奏・後奏等に即興的な要素を含み、学生の音楽性の陶冶にも肯定的に作用すると考えられる。岩手大学教育学部小学校課程の必修科目において、コードネ-ム伴奏法とそれに伴う即興表現を導入し、臨床的に実践研究を行った結果、初学者における有効性が確認された。これは同時に、学習指導要領に示されているリズム・旋律・重なりの創作の基礎となるため、今後のカリキュラム開発が期待される。さらに県内の短期大学、幼児教育学科・保育学科におけるピアノ指導の現状との比較から、図形楽譜や身体表現と関連したピアノ即興表現を、小学校教員養成課程へ導入する必要性も、今後の検討課題として指摘できる。 (2)国語科との合科的アプローチによる即興・創作 ドイツ語圏で生まれた20世紀の主要な音楽教育メソードである、リトミックとオルフ・アプローチで重視される、ことばと融合させた即興・創作の可能性を日本語を用いて試行し、その有効性を公開講座・研究会・学会・演習科目で理論的・実践的に探求した。素材として、小学校国語科教科書教材である宮沢賢治の「やまなし」を取り上げ、種々の状況下で音楽的即興・創作を試みた。具体的には、教官による朗読とピアノ即興、現職教諭との合同パフォーマンス、教員養成課程音楽科・国語科学生による合同演習、科目「保育音楽」における演習、附属小学校での研究授業等を試行し、その結果を分析的に検討した。理論研究・演奏研究・授業実践・教員養成における実施等、いずれにおいても肯定的な結果が得られ、横断的・総合的学習と関連させた今後のカリキュラム開発が期待される。なお、教育実践視察およびアンケート調査は、本年度の調査がまだ十全でないため、ドイツ語圏との比較を含めて、来年度への課題として引き継ぎたい。
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[Publications] 中地雅之他6名: "教員養成学部における「教科専門科目・音楽」改善の試み-小学校教員養成課程必修科目に関する97年度実践報告-" 岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要. 第8号. 29-43 (1998)
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[Publications] 中地雅之・上谷順三郎: "教員養成学部における国語科と音楽科の合同演習の試み-合科的アプローチによる「やまなし」(宮澤賢治)の理解と表現" 岩手大学教育学部附属教育実践指導センター研究紀要. 第8号. 44-60 (1998)