1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09780319
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院・情報システム学研究科, 助教授 (40205737)
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Keywords | 随意運動 / 運動制御 / 視覚 / 能動的認識 / 眼球運動 / 予測 / 計算論的モデル / お手玉 |
Research Abstract |
随意的な運動制御を行なう際,脳が視覚情報をいかに利用しているかを明らかにするため,「お手玉」を題材として以下の実験を行なった. まず,お手玉をしている最中の眼球運動を計測し,脳がどのような情報に着目しているかを調べた.その結果,多くの場合,一つの玉が軌道の頂点に達した時点で,視覚系はすでに次の玉を処理する準備に移行することがわかった.この結果は,脳は玉の軌道前半の視覚情報を重点的に利用していることを示唆する. 次に,液晶シャッタ眼鏡を用いてお手玉を行なっている最中の視覚情報を玉の動きに同期して遮断し,それがお手玉のパフォーマンスに与える影響を調べた.その結果,最初の実験結果から得られる予想に反して,軌道後半の視覚情報を遮断した場合に最もパフォーマンスが低下することが明らかになった. 以上の実験結果を説明するために,以下の考察を行なった.運動制御における視覚情報には,運動指令の計算に必要な情報を提供する役割に加えて,脳内の順モデルに基づく予測が正しいかどうかを判定する(さらには,順モデルの学習を行なう)材料を与える役割をもっていると考えられる.お手玉の場合,軌道前半の視覚情報は玉が予測通りの軌道を描いているかの確認に,また,軌道後半の視覚情報は受け取り側の手の位置を修正する運動指令生成のために用いられている,と考えれば,上の二つの実験結果を矛盾なく説明することができる.このことから,習熟した運動を行なう際,視覚は脳内での予測を補完する補助的な役割しか担っていないと考えられる. 来年度は,眼球の動きと受け取る手の動きの関係を計測し,視覚情報が受け手の動作にどのように反映されているかを実験的に明らかにする.また,以上の実験で得られた結果をもとに,随意運動制御における視覚情報獲得メカニズムの計算論的モデルの構築を進める.
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[Publications] 山近 慎二: "お手玉の運動制御における視覚情報の役割" 電子情報通信学会技術報告. NC97. (1998)
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[Publications] Y.Sakaguchi: "A subliminal effect in a colour-discrimination task and its modulation by spatial attention" Perception. 26. S95- (1997)