1997 Fiscal Year Annual Research Report
電離放射線が誘発する塩基置換突然変異の由来とその修復酵素の研究
Project/Area Number |
09780493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
張 秋梅 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00260604)
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Keywords | 放射線 / 活性酸素 / 5-フォルミルウラシル / DNA損傷 / 突然変異 / トランスバ-ジョン / DNA修復 |
Research Abstract |
放射線や活性酵素によってDNA中のチミンにはいくつかの種類のヒドロペルオキシドが産生する。ヒドロキシルラジカルがメチル基に反応して生じた5-ヒドロペルオキシドはさらに分解して、5-ヒドロキシメチルウラシルと5-フォルミルウラシル(5-FU)を生成する。放射線照射では、5-FUの生成量はチミングリコールのそれとほとんど同程度であり、5-FUがチミンの主な酸化的損傷の一つであることを示している。では、5-FUはどのような生物作用を示すのだろうか。放射線や活性酸素は多種多様なDNA損傷を生じるが、その個々の生物作用を知るためには、その損傷だけを含むオリゴヌクレオチドを合成して、in vitroでのDNA合成に与える影響を調べることが重要であろう。そこで、5-FUを1カ所だけ含むオリゴヌクレオチド(22-mer)の化学合成を行った。これをin vitroでのDNA合成のテンプレートにし、5'末端を^<32>Pでラベルしたプライマーのextension反応で5-フォルミルウラシルのDNA合成への影響について検討した。Klenow fragmentによるDNA合成は5-FUの一つ手前で強く阻害されること、さらに反応を継続するとこの損傷を越えて合成が進行すること、テンプレート中の5-FUの向かい側にはdAMPが優先的に挿入されるが、ほぼその1/3の割合でdCMPが入ることを見いだした。この結果は、5-FUがTからGへのトランスバ-ジョンを引き起こすことを示唆している。さらに、マウスやラットの肝抽出液中に、X線照射したDNAから5-FUを除去するグリコシラーゼの活性が存在することを見つけている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Q.M.Zhang and S.Yonei: "Replication of DNA templates containing 5-formyluracil,a major oxidative lesion of thymine in DNA" Nucleic Acids Research. 25(20). 3969-3974 (1997)
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[Publications] 米井脩治, 張秋梅, 松本由記子, 中原岳久: "酸化ストレスと細胞制御:生物のパラドックス" 放射線生物研究. 32. 87-104 (1997)
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[Publications] Takemoto,T., Q.M.Zhang and S.Yonei: "Different mechanisms of thioredoxin in its reduced and oxidized forms in defense against hydrogen peroxide in Escherichia coli" Free Radical Biology and Medicine. 24(5),(印刷中). (1998)
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[Publications] Zhang,Q.M., A.Tachibana and S.Yonei: "Experimental Protocols for reactive oxygen species and reactive nitrogen species(RNS)" Oxford University Press, 250 (1998)