1997 Fiscal Year Annual Research Report
放射線耐性細菌の酸化ストレスに対する防御機構の解明
Project/Area Number |
09780495
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
齋藤 毅 広島大学, アイソトープ総合センター, 助手 (10274143)
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Keywords | 放射線耐性細菌 / 酸化ストレス / γ-線 / 紫外線 / Deinococcus radiodurans / Rubrobacter radiotolerans / Halobacterium salinaruium / カロテノイド |
Research Abstract |
放射線耐性細菌の共通の特徴として赤色色素を含有することが知られている。我々は、現在最も良く研究されている放射線耐性細菌Deinococcus radioduransから含有色素をエタノールにより抽出し、主成分カロテノイド系色素をシリカゲル・カラム・クロマトグラフィー、及びHPLCを用いて分離精製した。この主成分色素に対し種々の化学テストを行い、また可視吸収スペクトル、MASSスペクトル、各種NMRスペクトル、CDスペクトルの測定を行った。ここで得られたデータよりこの色素の構造を(2R)-2,1'-dihydroxy-3',4'-didehydro-1',2'-dihydro-β,ψ-caroten-4-oneであると決定した。 既知の放射線耐性菌の中で最も高い耐性度を有するRubrobacter radiotolerans、及び最近我々のグループによって高い放射線耐性を有することが明かとなった高度好塩性古細菌Halobacterium salinariumの主成分赤色色素は共にbacterioruberinというカロテノイド系色素である。そこでbacterioruberin存在下プラスミドDNAに対しγ-線照射を行った。この照射サンプルを電気泳動しプラスミドDNAのTypeIからTypeIIへの変化を定量することによりDNA鎖切断量を評価した。ここでγ-線によるDNA鎖切断に関して、bacterioruberinはコントロールに対して2.4倍の防御効果を示した。またbacterioruberin存在下プラスミドDNAに対し紫外線照射を行った。この照射サンプルをT4 endonucleaseVで処理し、ピリミジンダイマー存在部位にニックを導入した。このサンプルを電気泳動し、プラスミドDNAの鎖切断量を定量することによりピリミジンダイマー生成量を評価した。ここで紫外線によるピリミジンダイマー生成に関して、bacterioruberinはコントロールに対して1.8倍の防御効果を示した。これらのことより、上記放射線耐性生物においてbacterioruberinがγ-線及び紫外線に対する耐性能を寄与している可能性が示唆された。
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