1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09780560
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保田 美子 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (30260102)
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Keywords | 塩基除去修復 / XRCC1 / DNA複製後修復 |
Research Abstract |
塩基除去修復に関与するタンパク質XRCC1が複製後修復に関与している可能性について検索しているが、複製後修復についてはこの1年の間に急速に関心が高まり、今まで独立に提出されてきたデータが次第に統一的に解釈される方向に向かっているといえる。そのような時期に開始した本研究は注意深く、常になるべく多くの情報を収集し、研究方向を時期にあったものとする必要があることを強く感じている。このような理由から、本研究の申請時に記載した具体的な方法論についてその後変更があったことをおことわりしておく。本年度は特に以下の2点について解析した。 1. XRCC1遺伝子が細胞周期の制御・調節に関与しているのか否か。 XRCC1遺伝子は分裂酵母rad4/cut5、出芽酵母Dpb11と相同性を持つ領域を持つことが知られている。これらのrad4/cut5、Dpb11遺伝子は各々DNA合成の完了と核分裂の協調、DNA合成の進行のチェックポイントの機能を有することが詳細に調べられている。したがって、XRCC1遺伝子にこれらの細胞周期関連遺伝子と同様の機能があるかどうかについては大変興味深い問題である。XRCC1欠損細胞とその親株を、軟X線照射後、hydroxyurea処理後、各々FACSortを用いて細胞周期の解析を行い、DNA損傷またはDNA合成の阻害による細胞周期の停止について調べた。X線照射後のG2期停止はどちらの細胞株でも観察された。さらにhydroxiurea処理後にはどちらの細胞株でもG1期に停止していた。これらのことからXRCC1欠損細胞であっても細胞同期のチェックポイントは正常に機能していることが分かった。ところが興味深いことに、MMS処理後の細胞周期の解析を行ったところ、XRCC1欠損細胞では親株に比べ、顕著にS期に細胞が蓄積していた。このことは、XRCC1欠損細胞ではMMSによって誘発されるDNA損傷をS期中に処理する能力が劣っていることを示している。X線に対する感受性はあまり強くないことと考えあわせると、XRCC1はsingle strand breakと成り得る損傷をS期中に修復またはtolerateさせる機能を持っていると推測される。 2. XRCC1欠損細胞にその親株と比較して多くのnickがゲノムDNAに存在することの可能性。 上記1.において示されたように、XRCC1細胞ではsingle strand breakとなり得る損傷を修復またはtolerateできないとすると、通常生育条件でも細胞のゲノムDNA中にはこのような損傷は絶えず生じているから、XRCC1欠損細胞では何も処理しない状態においてもsingle strand breakがゲノム中に多く生じていると予想される。このことは何も処理しないXRCC1欠損細胞の細胞周期解析において親株よりもG2期細胞が多いという結果が得られたことからも支持される。そこでさらにこのことを確認するためにアルカリ単一細胞ゲル電気泳動法(comet assay)によって細胞周期とゲノム中のnick量について解析する系を作成しているが、感度の高いデジタルカメラを必要とするので予算の面から難儀している。このほかにin vitroでの生化学的な解析を行うためにXRCC1タンパク質を大腸菌で発現させるための準備を進めている。申請者が以前同定したXRCC1タンパク質を核とした複合体がsingle strand breakとなり得る損傷を修復またはtolerateする機能を有しているかについて試験管内の反応系を確立して検定する予定である。
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