1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09780560
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保田 美子 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (30260102)
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Keywords | 塩基除去修復 / XRCC1 / DNA複製後修復 |
Research Abstract |
塩基除去修復系とDNA複製後修復系関係をXRCC1蛋白質の機能を解析することにより明らかにすることが本研究の課題である。当初予想され、実験による裏づけが待たれていたXRCC1蛋白質の複製後修復への関与はほぼ明かとなった。具体的には、1)XRCC1蛋白質を欠損したげっ歯類細胞株EM9は、野生型の親株AA8に影響を与えない濃度でのカフェイン処理に対して感受性を示し、生存率が低下した。カフェインはDNA損傷を受けた細胞がG2/M期で細胞周期を一時停止することを阻害するので、S期中に生じたDNA損傷を十分に修復またはtorelateできない細胞はそのままゲノムDNAに損傷を持ったまま細胞周期を進み、致死にいたると考えられている。カフェインに対する感受性は以前から複製後修復欠損として知られてきた色素性乾皮症バリアント群(XP-V)細胞の代表的な表現型である。さらに、2)MMS処理後、新生DNA鎖をパルスラベルしチェイス時間を追って新生DNA鎖の伸長を調べたところ、XRCC1欠損細胞では野生型親細胞株に比べ新生DNA鎖の伸長が遅いことが示唆された。この表現型もXP-V細胞に特徴的である。これは、DNA複製の鋳型鎖にDNA損傷が存在するとき、損傷を無視して複製を完了させる機構が欠損しているためと考えられている。以上のように、これまで紫外線によるDNA損傷に対する複製後修復欠損として知られたXP-V細胞に対してアルキル化剤によるDNA損傷に対する複製後修復欠損細胞が存在すること、そしてこの現象にはXRCC1蛋白質が重要な働きをになっていることが分かってきた。さらに、XP-V細胞の原因遺伝子は未だ同定されていないことから、XRCC1遺伝子は哺乳類細胞の複製後修復に関与する遺伝子として現在までに知られた唯一の例と言える。XRCC1欠損細胞の細胞抽出液を用いて試験管内で損傷を持つ基質DNAに対する複製能を解析する系の作成を試みたが、成功しなかった。この大きな原因はげっ歯類細胞では、ヒト細胞と異なり試験管内DNA複製系が極めて困難なことが挙げられる。今後は抗体を作成してヒト細胞のXRCC1を反応系から除去して試験管内DNA複製を行う予定である。
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