1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト乳癌細胞の増殖ならびに浸潤転移におけるエイコサノイドの役割
Project/Area Number |
09780568
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 吉孝 金沢大学, 医学部, 助手 (10236333)
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Keywords | アラキドン酸 / シクロオキシゲナーゼ / プロスタグランジン / ヒト乳癌細胞株 / TPA / matrix metalloproteinase / overexpression |
Research Abstract |
ヒト乳癌細胞におけるエイコサノイドの役割を調るために、その生合成に関わるシクロオキシゲナーゼ(COX)の機能について検討した。まずヒト乳癌細胞株Hs578を超音波破砕し、^<14>C標識のアラキドン酸とインキュベートしたところ、有意なアラキドン酸代謝活性は認められなかった。しかし、細胞を1μMのPhorbol(TPA)で刺激した後アラキドン酸代謝を調べると、50倍程度のシクロオキシゲナーゼ(COX)産物の産生増加が認められ、主な産生物はプロスタグランジン(PG)E2であった。また、Hs578Tで誘導されてくるCOX活性は、COX-2蛋白の発現増加にることが、ウェスタンブロットおよびノザンブロットで示された。Hs578TにおけるCOXの役割を調べるため、この細胞にヒトCOX-1とCOX-2のcDNAを組み込んだ発現ベクターをトランスフェクトし、安定形質発現株(Hs578TCOX1とHs578TCOX2)を得た。10μg/mlのコンカナバリンAの存在下で、Hs578TCOX1とHs578TCOX2のいずれも、matrix metalloproteinasc-2(MMP-2)の活性化が、Mock細胞に比べ促進されていることが、ゼラチンザイモグラフィーで示された。また、これらの細胞で膜型MMP(MT-MMP)の発現をノザンブロットで調べると、Mock細胞に比べて、Hs578TCOX1TPAで8倍、Hs578TCOX2で12倍の上昇が観察された。しかしながら、これらの細胞でのMMP-2の活性化の促進は、インドメサチンでは抑制されなかった。また、TPAあるいはPGE2をHs578T細胞に作用させても、MMP-2の活性化の促進は認められなかった。このようにCOX-1とCOX-2は、いずれもMT-MMPの発現上昇を介して、癌の浸潤転移に重要なMMP-2の活性化を促すが、その機構についてはさらに検討が必要であることが示された。以上の内容は、COXが乳癌の浸潤転移に重要な役割を果たすことを明らかにしたという点で大きな意義があり、現在投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)