1997 Fiscal Year Annual Research Report
神経特異的RGSタンパクの同定とその情報伝達系における機能の解明
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09780587
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
斉藤 修 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 主事研究員 (60241262)
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Keywords | RGS / G蛋白質 / GAP / 受容体 / GTP / 神経 / 情報伝達 / 脱感作 |
Research Abstract |
ごく最近、三量体G蛋白質系の制御因子として、RGS(Regulator of G protein Signaling)タンパクという一群のファミリー分子が明らかにされてきた。本研究では、脳神経系にどのようなRGSタンパクが存在するか、さらにそれがどのようにシグナル伝達を調節しているかを、解析した。 1)神経特異的RGSタンパクの検索 第一に、神経に特異的なRGSタンパクの検索を行った。マウス胚性ガン細胞P19細胞を用いて、神経分化に伴って誘導されるRGSタンパクを検討した。PCR法を用いて調べた結果、神経分化した細胞に部分配列のみが知られていたRGS8が誘導されてくることが判明した。そこでこの神経細胞に特異的なRGS8の全構造をcDNAクローニングにより明らかにした。 2)G蛋白質エフェクター系に対する新規RGSタンパクの作用の解析 まずRGS8蛋白質を作製してラットの脳の膜画分中のどの分子と反応するか、結合実験を行った。その結果、RGS8はGαのうちGoαとGiα3に優先的に結合することが判明し、これまでに知られたRGSタンパクに比べユニークなGα選択性をもつことがわかった。 次にRGS8が如何にG蛋白質共役系を制御しているか、電気生理学的解析を行った。神経細胞で重要なK+チャネルのひとつG蛋白質制御型内向き整流性K+チャネル(GIRK)は、受容体刺激の結果G蛋白質(Gi)から遊離されてくるGβγによって直接活性化される。このGIRKの活性化・不活性化に対してRGS8がどう作用するか電気生理学的に解析して、G蛋白質系に対する効果を検討した。カエル卵母細胞にGIRK、G蛋白質共役受容体,RGS8を発現させ解析した結果、RGS8の興味深い作用が判明した。RGS8は、GIRKの反応の大小を変えずに、リガンド添加によるオンの過程とリガンド除去によるオフの過程の両方の反応スピードを顕著に加速した。即ち、G蛋白質応答のオン・オフ両方向の加速因子として作用したのである。 次にRGS8のこのユニークな加速作用の分子メカニズムを検討した。RGS8がGαに直接結合することから、RGS8はGαのGTP水解サイクルを変化させている可能性が高い。そこで精製したGoαの示すGTPの水解サイクルに対するRGS8蛋白質の作用を解析した。その結果、オン反応のGDP-GTP交換はRGS8は変化させないが、オフ反応にあたるGTPの水解をRGS8は著しく活性化(GAP活性)した。即ち、RGS8によるオフ過程の加速は、そのGAP活性によることが判明した。オン過程の加速については、おそらくGβγの遊離がRGS8により活性化される可能性が考えられる。 これらの研究により、RGS8がこれまで言われてきた単なる負の制御因子ではなく、G蛋白質系のアクセルとして働く全く新しい調節因子であることが突き止められた。おそらく、神経細胞の興奮性の速い調節を可能にする機構の一つであると考えられる。この研究内容は、日本生化学会、都神経研国際シンポジュウムで発表され、また97年12月号のNature(390:525-529)に掲載された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] O.Saitoh, Y.Kubo, Y.Miyatani, T.Asano,and H.Nakata: "RGS8 accelerates G-protein-mediated modulation of K^+ currents." Nature. 390. 525-529 (1997)