1998 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオンの結合によりαヘリックス形成を誘起するプリオンペプチドに関する研究
Project/Area Number |
09780593
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 隆史 東北大学, 薬学部, 講師 (30222318)
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Keywords | プリオン / 金属蛋白質 / αヘリックス / 銅 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
プリオン蛋白質は約200アミノ酸残基からなる膜結合蛋白質であり、正常な状態でも特に脳内に多く存在する(細胞型プリオン蛋白質;PrP^C)。PrP^C遺伝子の欠損により脳内の銅イオン量が顕著に減少することから、PrP^Cは銅イオンの結合、運搬、および体内分布の調節に関与すると考えられる。蛋白質のアミノ末端に近い領域には、オクタペプチド(PHGGGWGQ)が規則正しく4回繰り返し現れ、この領域が銅イオンの結合部位となる。一方、プリオン病の原因となるのはPrP^Cではなく、PrP^Cが2次構造転移して生じる病原型プリオン蛋白質(PrP^<S_C>)であると考えられている。前者がαヘリックスに富む構造を取るのに対して、後者ではβシートの含量が高い。βシートの形成によりPrP^<S_C>は分子間で会合してアミロイド線維となり、細胞毒性を示す。 本研究は、オクタペプチドと銅イオンの結合様式、および結合特性を分光手法を用いて解析することにより、プリオン蛋白質の機能と病原性の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。本研究では、第一に、ヒスチジンと金属の結合のマーカーラマンバンドの探索を行った。プリオン蛋白質と銅イオンの結合にはオクタペプチド繰り返し領域のヒスチジン残基が重要な役割を持つと考えられるが、ヒスチジンと金属の結合を実験的に確認する簡易な方法はこれまで知られていなかった。種々のヒスチジンの金属錯体のラマンスペクトルを測定し、それらを解析した結果、ヒスチジン-金属結合の有用なマーカーバンドを見出すことに成功した。第二に、プリオン蛋白質の銅イオン結合と機能または病原性との関係について検討した。オクタペプチドと銅イオンの結合様式は溶液のpHに依存して様々に変化することが明らかとなり、このことがプリオン蛋白質による脳内銅イオン濃度の制御や蛋白質の病原化と関係している可能性を見出した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Miura,T.,Satoh,T.,Takeuchi,H.: "Role of Metal-Ligand Coordination in the Folding Pathway of Zinc Finger Peptides" Biochim.Biophys.Acta. 1384. 171-179 (1998)
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[Publications] Miura T.et al.: "Raman Marker Bands of Metal Coordination Sites of Histidine Side Chains in Peptides and Proteins" J.Raman Spectrose. 29. 41-47 (1998)
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[Publications] Uchiyama,M.,Kondo,Y.,Miura,T.,Sakamoto,T.: "First Observation of Zn-CN Bond in Highly Coordinated Mixed Organozincates by EXAFS fections copy" J.Am.Chem.Soc.119. 12372-12373 (1997)