1997 Fiscal Year Annual Research Report
固体NMRによる蛋白質の構造形成と機能発現における金属イオンの作用機構の解析
Project/Area Number |
09780610
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
辻 暁 姫路工業大学, 理学部, 助手 (60227387)
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Keywords | 固体高分解能NMR / バクテリオロドプシン / 膜蛋白質 / 部位特異的変異 / プロトンポンプ / α-ヘリックス |
Research Abstract |
高度好塩菌(Halobacterium Salinarium)の細胞膜に局在する光プロトンポンプ蛋白質バクテリオロドプシシの構造中に含まれる金属原子の結合部位および高次構造形成、機能発現における金属原子の役割を固体高分解能^<13>C NMRを用いて解析した。 バクテリオロドプシンを含む生体膜(紫膜)よりイオン交換樹脂を用いて金属イオンを除去した場合、蛋白質の吸収波長変化(短波長シフト)に対応し、^<13>C NMR化学シフトから観測される蛋白質の高次構造に親水部位、膜貫通部位とも大きな変化が見られた。この構造変化には脱イオンによる膜表面附近のpH低下による寄与が考えられることから、試料懸濁液のpHを低濃度(〜0.5mM)のNaOHにより中性に調整した結果、アラニン残基の側鎖メチル炭素の信号はループ部位2ケ所およびC-末端近傍の部位のみ脱イオン処理前のスペクトルと異なり、他の部位では一致することが見い出された。このことは、二価カチオン(Ca^<2+>またはMg^<2+>)の脱離または一価カチオン(Na^+)との置換が、膜表面近傍の局所的立体構造の変化を誘起することを示し、ループおよびC-末端近傍における金属イオンの特異的結合部位の存在とこれらの部位における高次構造形成への寄与が明らかになった。部位特異的変異バクテリオロドプシンを用いることにより、金属イオンの除去、置換により構造変化する部位のひとつが細胞外側表面のF-Gループに帰属され、ループ部位の高次構造が金属イオンとの相互作用により安定化されていることが示唆された。F-Gループに位置するGlu194はプロトン輸送に関与する機能上重要な残基であることから、金属イオンの結合はループの構造形成を通じて、プロトン輸送機能に関連していると考えられる。
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