1997 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌の挿入因子IS1及びIS3の転移とその制御機構に関する研究
Project/Area Number |
09780624
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関根 靖彦 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (80222074)
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Keywords | トランスポゾン / 大腸菌 / 挿入因子(IS) / IS1 / IS3 / 転移反応 / 転移制御 / 環状分子 |
Research Abstract |
1.IS3のトランスポゼ-スの機能;(1)IS3のトランスポゼ-スを細胞内で産生させると、環状IS3モデル分子から直鎖状分子が生じることを確認した。この直鎖状分子の末端構造を、プライマー伸長法で解析したところ、DNA切断はIS3の末端で起こっており、この結果から、直鎖状IS3分子は、トランスポゼ-スの作用により環状分子が3bPのstaggered cutを受けることにより生じると結論した。(2)トランスポゼ-スを供給した場合、環状IS3モデル分子が標的分子に転移することを発見した。転移産物の構造を解析したところ、通常のIS3の転移で観察されるのと同じ3bpの標的配列の重複がおこっていた。これらの結果から、環状IS3分子が転移の中間体として機能することが強く示唆された。 2.IS3のOrfA、OrfBタンパク質の機能;IS3を運ぶ、プラスミドと転移の標的プラスミドを保持する大腸菌にOrfA、OrfBタンパク質を誘導産生できるプラスミドを導入してIS3の転移能を測定したところ、OrfAタンパク質はIS3の転移を強く阻害し、OrfBタンパク質はOrfAタンパク質の阻害作用を増強することがわかった。 3.IS1のトランスポゼ-スの機能の解析;IS1のトランスポゼ-スの作用によりIS1を運ぶプラスミドから環状分子が生じる。この環状IS1分子をpUCベクターにクローニングして環状IS1モデル分子を作成した。細胞内でトランスポゼ-スを供給した場合、環状IS1モデル分子が標的分子に転移することを発見した。転移産物の構造を解析したところ、通常のIS1の転移で観察されるのと同じ9bpの標的配列の重複がおこっていた。これらの結果から、環状IS1分子が転移の中間体として機能することが示唆された。 本研究により、転移機構が異なると考えられているIS1とIS3について、類似した環状分子がどちらのISにおいても転移中間体として機能することが示唆された。ISの転移反応における環状分子の役目の一般性が示された。
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