1997 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光偏光度測定による細胞内蛋白質リン酸化反応の可視化
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09780650
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 和義 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (70222130)
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Keywords | リン酸化 / ペプチドライブラリー / チロシン / 蛍光偏光度 / ランダムペプチド |
Research Abstract |
細胞生物学が対象としている多くの生命現象に、蛋白質リン酸化反応は関わっている。その反応の検出には、ラジオアイソトープやリン酸基に対する抗体などが用いられてきたが、基本的に破壊検査を伴っている。生きた細胞のまま、すなわちin vivo, in situ,さらにreal timeでリン酸化反応を検出できる技術は 知られていない。もしもそのような技術が確立されれば、刺激応答などで知られている速やかなリン酸化反応を目で追えるだろうし、その反応が細胞内のどの部分で進行しているかも容易に決定できると考えられる。 本研究では、第1段階として蛋白質のリン酸基と結合する蛍光物質を作成する。一般に、蛍光物質に励起光を与えると数ナノ秒の後には蛍光を発し基底状態に戻る。興味深いことに、励起光が偏光であり、蛍光物質が固定されていれば、生じる蛍光も偏光を保つことが知られている。しかし蛍光物質が固定されておらず自由に回転運動している場合は、分子の回転運動が速いために、偏光が乱されてしまう。すなわち励起されてから蛍光を出すまでの間に分子が回転するので、偏光を保てないわけだ。もしもリン酸基と結合出来るような蛍光物質を用意できるなら、リン酸化された蛋白質が生じた場合、蛍光物質は蛋白質と結合し、回転運動が遅くなる。すなわち生じる蛍光の偏光が保たれる。このような蛍光物質があれば偏光の強度(蛍光偏光度)を測定するだけで、リン酸化の度合を測定することができるのだ。 本年度は、この目的達成のために、大腸菌表面にランダムペプチドを発現するライブラリーを用いた。リン酸化チロシンと結合するペプチドを発現しているものを、クローニングするために、リン酸化チロシンをビオチン化した。次に、ビオチン化リン酸化チロシンをアビジンコートされたプレートに結合させ、これに結合する大腸菌を回収した。大腸菌をアガ-プレートにまいて、得られたクローンをそれぞれ再度培養した。次にそれぞれのクローンが真にリン酸化チロシンに結合するペプチドを発現しているか否かを明らかにするために、FITCラベルしたリン酸化チロシンを作成し、蛍光偏光度の変化を指標にしてスクリーニングしている。現在までポジティブなクローンは得られていないが、引き続きアッセイを行っている。
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[Publications] CHIBA,K,Hoshi,M,Isobe,M, E,: "Bioluminescence in the tunic of the colonial ascidian,Claelina miniata,ldentification of luminous cells in vitro" J.Exp.Zool. (in press).