Research Abstract |
含硫環状化合物有機溶媒であるthipheneの継続投与後,小脳病変から波及する大脳内神経細胞死過程を明らかにする目的で, 1)脳定位装置を用いて,側頭皮質,下丘,扁桃核複合体付近,海馬,前頭骨の硬膜上に電極を埋め込み,当該脳波と既知の見かけ上の発作異常との関係を見出すことにした. 2)病理組織像,Fos蛋白発現,ミクログリアの発現状況の検索を行った. その結果, I表面脳波では,運動性痙攣時のマクロ的な異常脳波をみているが,側頭皮質,下丘,扁桃核複合体付近,海馬の異常脳波を捉えることはできなかった.運動性発作出現前から,深部脳波に単発する発作波が出現した.但し IIa)Fos蛋白発現は,見かけ上の運動性痙攣後12時間までに,小脳皮質,小脳核,赤核,下丘,側頭,後頭,前頭,頭頂の大脳皮質,海馬,扁桃核複合体で逐次出現し消退していた. b)ミクログリアは,Fos蛋白発現より遅れて,小脳,頭頂,側頭皮質,梨状葉皮質,下丘にみられ,小脳吻側小葉での出現が優位であった. c)HE染色で確認できる神経細胞壊死は,小脳,頭頂,側頭皮質,梨状葉皮質,下丘において,Fos蛋白発現とほぼ同時に出現し,Fos蛋白消退後も存在した. 9年度の研究で,チオフェン投与後,外見上の運動性痙攣以前に,側頭皮質,下丘,扁桃核複合体付近,海馬で連続発作波をとらえうる異常発作時の,Fos蛋白発現,ミクログリアの出現が神経細胞消失と関連しているらしいことがわかった.10年度の研究では,深部脳波異常の出現とその期間,Fos蛋白発現,ミクログリアの発現状況とその分布との関連を異常興奮後の細胞消失に注目して検討したい.
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