イメージング法を用いた神経細胞樹状突起の興奮性制御メカニズムの解明

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09780743
• Research Institution: Jichi Medical University
• Principal Investigator: 坪川 宏 自治医科大学, 医学部, 助手 (30227467)
• Keywords: 海馬 / 錐体細胞 / 樹状突起 / 興奮性 / 細胞内カルシウム / GABA / コリン作働性受容体 / Gタンパク

Research Abstract

海馬錐体細胞における活動電位の樹状突起への逆行性伝播に関して、以下の2点を明らかにした。
1)遠位樹状突起への逆伝播とそれに伴う樹上突起内のカルシウム濃度増加は、分子・果粒層への電気刺激で誘発されるIPSPにより抑制されることがわかった。抑制性入力の後4-6ms以内の活動電位の振幅が小さくなり、膜の過分極の程度より、抑制性入力と活動電位との時間関係が重要であった。またBicuculline 10μMを投与すると抑制が消失した。これらの結果から逆行性伝播の抑制はGABA_A受容体の活性化によるClコンダクタンスの一過性の増大が膜のシャンティングをひき起こしたために起こると考えられる。従来IPSPの樹状突起における役割は、EPSPによる膜の脱分極に桔抗して膜を過分極させることにより活動電位の発生を抑えるものと認識されていたが、この結果により、それ以外に一旦発生した活動電位の伝播を止めるという役割があることが明らかになった。遠位樹状突起に入力を送る抑制性の介在ニューロンがその役割の担い手かもしれない。
2)樹状突起への逆伝播は、アセチルコリン受容体のうちのムスカリン性受容体の活性化によって促進され、逆伝播によって惹起される樹状突起での細胞内カルシウム濃度増加も大きくなることがわかった。このメカニズムを明らかにするために、現在Gタンパクを介する細胞内情報伝達系の寄与について調べているところである。

Research Products

• [Publications] Tsubokawa,H, and Ross,W.N.: "Muscarinic modulation of spike backpropagation in the apical dendrites of hippocampal CA1 pyramidal neurons." Journal of Neuroscience. 17. 5782-5791 (1997)
• [Publications] Tsubokawa,H, and Ross,W.N.: "IPSPs modulate spike back propagation in the dendrites of hippocampal CA1 pyramidal neurons." Neuroscience Research Supplement. 21. S21- (1997)
• [Publications] 坪川 宏: "NMDAレセプターの機能." 医学のあゆみ. 183. 10-14 (1997)
• [Publications] Tsubokawa,H, and Ross,W.N.: "IPSPs modulate spike backpropagation and associated [Ca^<2+>]i changes in the dendrites of hippocampal CA1 pyramidal neurons." Journal of Neurophysiology. 76. 2896-2906 (1996)
• [Publications] Tsubokawa,H, and Ross,W.N.: "Pharmacological modulation of spike propagation in the apical dendrites of hippocampal pyramidal cells." Society for Neuroscience Abstract. 22. 791- (1996)