1998 Fiscal Year Annual Research Report
イメージング法を用いた神経細胞樹状突起の興奮性制御メカニズムの解明
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09780743
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
坪川 宏 自治医科大学, 医学部, 講師 (30227467)
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Keywords | 海馬 / 錐体細胞 / 樹状突起 / 興奮性 / 細胞内カルシウム / CaMKII / コリン作働性受容体 / Gタンパク |
Research Abstract |
活動電位の樹状突起への逆伝播は、アセチルコリン受容体のうちのムスカリン性受容体の活性化によって促進され、逆伝播によって惹起される樹状突起での細胞内カルシウム濃度増加も大きくなることが、平成9年度に実施された研究により示された。この現象の基にあるメカニズムを明らかにするために、本年度は、アセチルコリン受容体のアゴニストであるカルバコールの投与により活性化する細胞内情報伝達系の寄与について、特定のGタンパクを欠損させたノックアウト・マウス等を併用して調べた。その結果、1)3量体Gタンパクのうち、Gqのαサブユニットが欠損したミュータントでは、ムスカリン性受容体の活性化による逆伝播の促進が起こらないこと、2)ワイルド・タイプでは、細胞外に蛋白質キナーゼの活性剤であるホルボール・エステルを投与すると、ムスカリン性受容体の活性化と同様な促進反応が見られることが分かった。そこでムスカリン性受容体の活性化がGqの活性を高め、イノシトールリン脂質代謝系を介して蛋白質キナーゼC(PKC)が活性化する、という経路が重要と思われた。しかしながら、3)蛋白質キナーゼの阻害剤であるH-7を予め投与しておくと、ホルボール・エステルの効果は消失するが、ムスカリン性受容体の活性化による促進反応は阻害されないことが分かり、経路は単一ではないことが示唆された。さらに、4)ワイルド・タイプ、ミュータントともに、樹状突起に大きなカルシウム流入があると、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)の活性化により逆伝播が促進されることがわかり、PKCの関与するものとCaMKIIの関与するものの、少なくとも2つの独立した興奮性制御系が存在することが示された。
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[Publications] Tsubokawa,H.: "Uneven spatial distribution ofhyperpolarization-activated conductances in the CAl pyramidal neurons of mouse hippocampus." Neuroscience Research Supplement. 22. S62 (1998)
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[Publications] Tsubokawa,H.: "Gq protein-coupled mechanisms underlying muscarinic modulation of spike backpropagation in the apical dendrites of hippocampal CAl pyramidal neurons." Japanese Journal of Physiology. 48. S126 (1998)
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[Publications] Tsubokawa,H.: "Dendritic depolarization induces long-lasting enhancement of spike backpropagation in the apical dendrites of CAl pyramidal neurons." Society for Neuroscience Abstract. 24. 807 (1998)