1998 Fiscal Year Annual Research Report
小脳プルキンエ細胞におけるグルタミン酸受容体の細胞質領域に結合する因子の探索
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09780759
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岸上 哲士 理化学研究所, 細胞内情報研究チーム, 研究員 (10291064)
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Keywords | 小脳 / δ2受容体 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
中枢神経系神経細胞のシグナル伝達においては、グルタミン酸受容体が主たる働きを行っている。これらの受容体は、神経細胞内においてシナプス部位に局在し、他の蛋白質と複合体を構成することによって、その活性調節を含めシグナル伝達の調節がなされることと考えられる。従って、これらの受容体の細胞質部位に結合する蛋白質を同定し、その機能を解析することによって受容体によるシグナル伝達の調節機構を解明していくことが出来ると考えられる。この研究においては、グルタミン酸受容体のなかで小脳のプルキンエ細胞に特異的に発現しているδ2受容体に注目し、そのカルボキシル末端に結合している蛋白質に焦点を当てることにより、そのシナプス形成及び可塑性に於ける働きを明らかにする事を目指している。 グルタミン酸受容体δ2の主たる細胞質領域はカルボキシル末端に存在し、156アミノ残基の長さを持っている。この部分のアミノ酸配列をそれぞれのアミノ酸の性質に従って構造解析を行うと、ほぼ50アミノ残基づつの3つの部分に分けられ、真ん中のβシートが両側のαヘリックスに挟まれた構造をとっているものと予測された。既知の遺伝子のアミノ酸配列との比較を行うと、C末側の50アミノ酸はSOS(Son of Sevenless)蛋白質とホモロジーが高いことが明らかとなった。SOS蛋白質は細胞内情報伝達系において重要な役割を行っていることが明らかになっており、これらのホモロジーの高さはδ2受容体がこの領域を通して細胞内情報伝達系において重要な働きを行っていることを示しているものと考えられる。これらの結果をもとにして、δ2受容体のC末をlexA遺伝子に結合したものをbaitとして用い、yeast two-hybrid systemによって、この領域に結合する蛋白質遺伝子の同定を試みた。その結果、数十の候補クローンが分離され、その構造の解析を進めている。
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