サルの視床髄板内核群から線条体への投射の行動学習における役割

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09780770
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 松本 直幸 大阪大学, 健康体育部, 助手 (00252726)
• Keywords: 線条体 / 視床髄板内核群 / 黒質緻密部 / 条件づけ / 報酬 / 行動学習 / ムシモル / ドーパミン

Research Abstract

本研究はサル線条体の介在細胞の一つである持続放電型細胞(TANs)と視床髄板内核群(CM-Pf)の細胞が、行動の学習の上でどのような機能的な意義を担っているのかを明らかにすることを目的として実施した。
感覚刺激と運動の条件づけ課題を用いて両者の活動を記録したところ、TANsは条件づけ前では感覚刺激に応答するものが少数(38%)であるが、条件づけ完成後は半数以上(58%)のものが条件づけ刺激に対して応答を示すようになった。それに対してCM-Pfの細胞は条件づけ前から感覚応答を示すものが7割以上を占め、その割合は条件づけ完成後も変わらなかった。また、TANsは報酬と連合している感覚刺激に対して選択的な応答を示すのに対し、CM-Pfの細胞は報酬の有無とは無関係に様々な感覚刺激に対して応答を示した。そこでCM-PfがTANsへの重要な入力源であるかを調べるために、ムシモルをCM-Pfに圧注入しその機能を一時的に遮断した後線条体からTANsの記録を行った。ムシモルによるCM-Pfの機能遮断後報酬と結びついた感覚刺激に応答するTANsはわずか14%にすぎなかった。このことは、TANsが示す感覚応答の形成には視床CM-Pfからの入力が必須であることを示唆する。TANsはCM-Pfから様々な感覚情報を受け取るとともに黒質緻密部からドーパミン入力を受け、それがCM-Pfからの入力を修飾することによって報酬と結びついた感覚刺激に対してのみ応答するようになると考えられる。このTANsの活動は投射細胞の活動を修飾し、その状況依存的な活動の形成に関与していると考えられる。
次年度は時系列を持つ行動課題を用いてさらに、手続き運動学習における視床一線条体投射の意義を明らかにしていく予定である。

Research Products

• [Publications] Kimura Minoru: "Nigrostriatal Dopamine System May Contribute to Behavioral Learning through Providing Reinforcement Signals to the Striatum." European Neurology. 38(suppl 1). 11-17 (1997)
• [Publications] Kimura Minoru: "Role of Basal Ganglia in Learning and Memory of Sequential Movements." Japanese Journal of Physiology. Suppl.47. S.28 (1997)
• [Publications] Matsumoto Naoyuki: "Activity of Tonically Active Neurons in Striatum and Neurons in the Intralaminar Thalamus Before and After the Behaviroral Learning in the Monkey." Neuroscience Research. Suppl.21. S257 (1997)
• [Publications] Matsumoto Naoyuki: "Expression of Behaviorally Conditioned Responses of Tonically Active Striatal Neurons Depends on Thalamic Input from the CM-Pf Complex." Society for Neuroscience Abstract. 23-1. 464 (1997)
• [Publications] Kimura Minoru: "Advances in Understanding the Basal Ganglia and New Surgical Approaches" Obeso J., DeLong MR., Ohye C.& Marsden CD, 286 (1997)