Research Abstract |
変形性関節症における関節潤滑の機能低下のメカニズムを解明するために,家兎膝関節軟骨を対象とした実験を行った。 家兎の前十字靭帯を切離し,ケージ内で12及び24週飼育することにより,変形性関節症モデルを作製した。屠殺後,膝関節を摘出し,周囲軟組織を切除した後に,振り子試験により摩擦係数を測定し,潤滑性能の指標とした。このときの過重は,家兎体重の約53%,および85%とし,摩擦係数は揺動角0.1radにおける値とした。その後,軟骨の摩擦部分をメスで摘出し,原子間力顕微鏡にて形状を観察した後に表面粗さを求めた。さらに,原子間力顕微鏡で軟骨の押し込み試験を行い,剛性を求めた。 健常膝の摩擦係数が約0.01であったのに対し,変形性関節症膝の摩擦係数は0.02ほどであり,潤滑機能の低下が確認された。表面観察の結果,健常軟骨で多く見られた高さ2μm程度の突起物が,変形性関節症膝では減少していた。この突起は,プロテオグリカン凝集体と考えられた。表面粗さは,健常の場合に274nmであったのが,変形性関節症では145nmに低下していた。剛性は,健常の場合,24.3x10^3N/mであったのが,変形性関節症では35.0x10^3N/mに増大していた。 剛性の増大は,スクイズ膜による弾性流体潤滑に悪影響を及ぼすため,変形性関節症において潤滑性能が低下していたと考えられた。健常関節で多く見られた軟骨表面の突起は,関節液の流動性を低下させ,関節の潤滑機能を高めると考えられた。逆にこの突起の少なかった変形性関節症膝では,潤滑性能の低下に至ったと考えられた。以上から,変形性関節症では,軟骨表面のプロテオグリカン層が破壊されると同時に,軟骨の硬化が起こり,潤滑機能の低下に至ることが明らかとなった。
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