1997 Fiscal Year Annual Research Report
両性高分子電解質ゲル構造をもつ材料表面の分子設計とその生体組織への粘着
Project/Area Number |
09780805
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 功一 神戸大学, 工学部, 助手 (50283875)
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Keywords | 生体接着 / 組織粘着 / 両性高分子電解質 / ハイドロゲル / 真皮組織 / 静電相互作用 / 水素結合 / 界面層形成 |
Research Abstract |
生体組織に対して高い粘着性を示す高分子表面の設計を目的として,両性高分子電解質から構成されたハイドロゲルを精密に分子設計した。両性高分子電解質ハイドロゲルの作製にはモノマーとしてアクリル酸(AAc),N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAP),N,N′-メチレンビスアクリルアミド(MBA)を用い,それらの重合には光化学反応装置による光重合および熱重合を利用した。得られたハイドロゲルの平衡含水率および圧縮弾性率測定結果からゲルの分子構造を推定した。さらに,得られたハイドロゲルを用いてブタ背部皮膚より採取した真皮組織への粘着力を湿潤下において試験した。両性高分子電解質ハイドロゲル中には,モノマー単位のもつ正電荷と負電荷の静電的相互作用に基づく凝集構造がみられた。この静電相互作用に基く物理架橋によって含水率が最小となる場合に,ハイドロゲルは高い組織粘着性を示した。また,ハイドロゲル表面のカルボキシル基表面密度は組織粘着力と高い相関を示した。この結果より,組織への粘着には,ゲル表面と生体成分の水素結合ならびに界面層の形成が重要な役割を果たすことが示唆された。導入された物理架橋は,水素結合形成に寄与するカルボキシル基の密度を高め,しかも,物理架橋の場合とは異なり,ゲル表面近傍の分子鎖の運動を拘束しにくいため,高い粘着性を示したと考えられた。以上のように,両性高分子電解質ゲル表面の分子構造の組織粘着性に与える影響について基礎的な知見を集積することができた。
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