1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09833002
|
Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
神取 秀樹 京都大学, 大学院理学研究科, 講師 (70202033)
|
Keywords | プロトンポンプ / 塩素イオンポンプ / レチナール / 異性化 / 水素結合 / 水分子 / ダイナミクス / 視覚 |
Research Abstract |
本研究においては、光駆動プロトンポンプであるバクテリオロドプシンや視物質であるロドプシンを対象として、生体での構造と機能との相関を明らかにすることを目的とした。特に、効率や選択性、方向性といった生体がもつ特異性がどのように発現されているのか、その機構を蛋白質の構造や光反応ダイナミックスと結び付けて明らかにすることを目指した。分光学的な手法を用いて本年度は以下のような成果が得られた。 バクテリオロドプシンの異性化に伴う蛋白質の側の構造情報を得るため、偏光赤外分光法を初期異性化過程に対して適用した測定系を構築した。その結果、異性化反応に伴う発色団の構造変化によって、水分子を含む水素結合ネットワークに大きな歪みが生じていることがわかった。一方、ノセクテリオロドプシンがプロトン輸送の方向性を発現するためには、蛋白質内部に方向性を規定するスイッチのようなものが過渡的に生じることが必要であろう。我々は最も大きく構造変化をした中間体であるN中間体における水分子の構造変化を測定することに成功し、後期プロトン移動に関与していると考えられる水分子の水素結合変化を解析した。さらにN中間体に対する偏光赤外分光から、スイッチに伴う蛋白質骨格の構造変化に現れる新しい振動バンドを見出した。さらにシステインのS-H伸縮振動が他の振動から離れた領域に存在することに着目し、水素結合ネットワークの動的な構造変化のプローブとして、システインの導入全提案した。 視覚の光センサーであるロドプシンは、超高速異性化を行う結果高い光感度を得ていることが知られている。我々はフェムト秒アップコンバージョン法を用いて、ロドプシンからの蛍光をはじめて実時間で捉えることに成功した。また赤外分光法を用いて活性中心や細胞質側領域に水分子が存在することを明らかにした。視物質であるロドプシンの機能は、光によってG蛋白質を活性化することである。我々は複合体の形成に伴う赤外スペクトルの変化を捉えることに成功し、さらにトランスデューシンにおける相互作用部位であるC末端のペプチドを用いて同様の測定を行うことにより、ロドプシンとトランスデューシンに由来する信号を帰属した。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] Yamazaki,Y.: "Interaction of the Protonated Schiff Base with the Peptide Backbone of Valine 49 and the Intervening Water Molecule in the N Photointermediate of Bacteriorhodopsin" Biochemistry. 37. 1559-1564 (1998)
-
[Publications] Kandori,H.: "Polarized FTIR Spectroscopy Distinguishes Peptide Backbone Changes in the M and N Photointermediates of Bacteriorhodopsin" J.Am.Chem.Soc.120. 4546-4547 (1998)
-
[Publications] Kandori,H.: "Cysteine S-H as a Hydrogen Bonding Probe in Proteins" J.Am.Chem.Soc.120. 5828-5829 (1998)
-
[Publications] Kandori,H.: "Protein Structural Changes in Bacteriorhodopsin upon Photoisomerization as Revealed by Polarized FTIR Spectroscopy" J.Phys.Chem.B. 102. 7899-7905 (1998)
-
[Publications] Chosrowjan,H.: "Rhodopsin Emission in Real Time : A New Aspect of the Primary Event in Vision" J.Am.Chem.Soc.120. 9706-9707 (1998)
-
[Publications] Nishimura,S.: "Interaction between Photoactivated Rhodopsin and the C-Terminal Peptide of Transducin Subunit Stusied by FTIR Spectroscopy" Biochemistry. 37. 15816-15824 (1998)
-
[Publications] Nagata,T.: "The Hydrogen Bonding Network of Water Molecules and the Peptide Backbone in the Region Connecting Asp83,Gly 120 and Glu113 in Bovine Rhodosin" Biochemistry. 37. 17216-17222 (1998)
-
[Publications] 茂木立志: "バクテリオロドプシンの結晶構造とプロトン輸送機構" 蛋白質核酸酵素. 44. 51-57 (1998)