1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本語母語話者と非母語話者の接触場面における談話形成プロセスの研究
Project/Area Number |
09834004
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
村上 恵 三重大学, 留学生センター, 講師 (80283513)
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Keywords | 談話分析 / コミュニケーション / 地図 / 課題達成実験 / 認知フレーム / 空間認知 / 相互作用 / ストラテジー |
Research Abstract |
村上(1998a)では、「道順説明」という課題達成実験での談話資料を基に、参照点機能の型、およびその型と「道順説明」の表現類型との関係について、分析と考察を試みた。結果として明らかになったのをは、次の3点である。(1)「道順説明」の参照点機能には、認知主体(説明者)の図形認知の異なりにより、パス(paths)基盤型と、ディストリクト(districts)基盤型の2種が存在する。(2)パス基盤型の「道順説明」は、村上(1996)で明らかにしたr道順設朋」の2種の表現類型に基づいていると考えられる。(3)ディストリクト基盤型の「道順説明」では、図形確認によって「地図形成」が行われ、これを踏まえて目標への移動指示が行われる。結果として、この図形確認と移動指示は、「道順説明」を進める上で交互に繰り返されていく。 他方、村上(1998b)では同談話資料を元に、コミュニケーション対立を解決するための解決策に焦点を当て、提案される解決策の種類と、それらが一連の談話の中で生み出す結果や効果を考察した。結果として、次の3点が明らかになった。(1)対立を意図的に設定した「道順説明」の談話の流れでは、課題遂行連鎖と、対立解決連鎖の二つが反復されている。(2)解決策、出直し型(対立が生じた初期のやり取りで用いられて多くの場合不成功に終わりやすい)と、転換型(やり取りの終盤に用いられて基本的に成功へとつながりやすい)の二種に大別できる。(3)対立解決連鎖において、解決策を提案する前の[折衝]段階では、主に4種の対象(視点を定める空間の認知フレーム、方向参照地点、地図の向き、現在位置)に関して折衝が行われている。出直し型の解決策が反復される場合にも、これらの折衝の積み重ねによって、被験者たちはやり取りの過程に確信を強めていき、結果として、課題達成のために転換型の解決策が提案されると考えられる。
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Research Products
(2 results)