1997 Fiscal Year Annual Research Report
関節軟骨の細胞外マトリックス代謝に及ぼす加齢の影響:新規抗炎症薬の提唱にむけて
Project/Area Number |
09835011
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
伊東 晃 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (70096684)
|
Keywords | 加齢 / 変形性関節症 / 関節軟骨細胞 / プロテオグリカン / インターロイキン1 |
Research Abstract |
慢性関節リウマチや変形性関節症の発症頻度は加齢と共に増加し,その進行に伴って関節機能の損失がおこることは周知の事実である。これら疾患と加齢との関連については不明な点が多い。そこで平成9年度は、ウサギ関節軟骨組織の形態学的観察および当該組織より調製した軟骨細胞の培養系を使用し、加齢の影響について詳細に検討した。生後3週,6カ月および1.5年の軟骨組織の顕著な変化は,加齢にともなった軟骨層の薄層化,軟骨マトリックスの含量低下,さらには単位面積当たりの軟骨細胞数の減少であった。 組織学的な観察結果の裏付けとして,細胞培養系を使用し生化学的検討を行った。上述組織より調製した軟骨細胞の増殖能は加齢と共に遅延し,かつコンフルエント時の単位面積当たりの細胞数も顕著に減少すること,すなわち個々の細胞において加齢に起因した増殖遅延と肥大化が判明した。これらの現象は,先の組織内での細胞数減少の一因でもあると想像された。また,組織マトリックス含有量の低下現象についても加齢の進行した細胞において明かなプロテオグリカン生合成能の低下が観察された。また,同細胞からのプロテオグリカン遊離をトルイジンブルー染色法により観察すると,加齢の進んだ組織由来の軟骨細胞ほどに,プロテオグリカン保持能が弱いこと,さらには上述した関節疾患の進行と密接に関連する炎症性サイトカインであるインターロイキン1(Il-1)の添加によりさらにその遊離が促進されること,またIL-1に対する反応性も加齢の進んだ組織由来の細胞において高いことが判明した。 以上の結果から変形性関節症等における関節機能損失は,細胞機能の老化,さらには炎症性サイトカインに対する感受性の増大等が起因していることが強く示唆され,来期の研究の方向性が明確となった。
|