2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09837001
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Research Institution | Tsukuba University |
Principal Investigator |
元永 和彦 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (80272938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 康 京都大学, 法学研究科, 助教授 (50263059)
森田 博志 千葉大学, 法経学部, 助教授 (70251189)
道垣内 正人 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (70114577)
横溝 大 金沢大学, 法学部, 助教授 (00293332)
早川 吉尚 立教大学, 法学部, 助教授
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Keywords | 国際私法 / 国際民事訴訟法 / 電子商取引 |
Research Abstract |
電子商取引には、取引の場所的要素が取引自体に殆ど影響しないという特徴があるため、従来の国際私法・国際民事訴訟法の問題解決の方法論が適切ではない結果を招来する場合がある。例えば、国際裁判管轄の決定にあたっては、特に消費者保護の観点から、消費者の常居所地に管轄を認め、それを否定する合意管轄約款の効力を無効とする解決策がありうるが、電子商取引の場合には、事業者に契約の相手方である消費者の所在地を化覚知させることは現実的ではなく、一定地域の消費者のみを取引の相手方とすることは技術的に困難であると同時に電子商取引の魅力を削ぐ結果にもなってしまう。そのため、結果的に予測し得ない場所で訴えを提起される可能性があるわけである。準拠法の選定にあたっても消費者保護のために消費者の常居所地法を適用するとなると、同様の問題が生じることになり、予測し得ない法律が準拠法となって損害賠償責任等を負わされる可能性がある。特に、取引にかかる契約の履行が有体物の引渡を伴わない場合にはこの問題は深刻である。この点、米国の統一電子計算機情報取引法(UCITA)で、当事者が準拠法について明示的に合意していない場合の準拠法の決定方法について定めている109条(b)が、アクセス契約(電子的手段によって他人の情報処理システムにアクセスし、又はこれから情報を取得するための契約)又は複製物の電子的な引渡のための契約は、合意がなされた時点にライセンサーが所在した法域の法律が適用される(UCITA109条(b)(1)項))としていることは示唆に富む。サイバースペースに地理的限界がないことから、電子商取引のルールについてもその統一を図っていくことが望まれるが、当面はその特質に配慮しつつ予測可能性と消費者保護等の実質的妥当性の調和を図りうる解決策を考える必要があろう。
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