1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト頭蓋形態の地理的変異・多様性とその自然的背景-新人の起源と進化を探る
Project/Area Number |
09839003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
埴原 恒彦 東北大学, 医学部, 助教授 (00180919)
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Keywords | 解剖学的新人 / 拡散 / 変異 / 形態 / 頭蓋 / 進化 / 起源 / 分布 |
Research Abstract |
現生人類集団の頭蓋形態とその地理的変異を明らかにするために、世界の115集団を分析対象とし、計測的、非計測滴データを用いて分析を行った。頭蓋計測値に基づく分析では、サハラ砂漠以南のアフリカ集団と、オーストラリア先住民がもっとも類似した頭蓋形態を示し、現世人類の頭蓋形態は大きく2つの地理的勾配を示すことが明らかとなった。一つは、サハラ砂漠以南のアフリカから、北アフリカ、南アジア・西アジアを経て、ヨーロッパ、さらに北欧に至る勾配であり、他はオーストラリアからメラネシア、島嶼部〜大陸部東南アジア、日本を含む東アジアから、北東アジア、極北地域に至る勾配である。後者のグループにはポリネシア人、アメリカ先住民族が含まれるが、ポリネシア人は東南アジア集団により近く、アメリカ先住民族は東アジア、北東アジア集団に類似する。一方、頭蓋の非計測的データに基づく分析では、サハラ砂漠以南のアフリカ集団が、他のあらゆる集団と異なった特徴を示すことが明らかになった。このことは集団遺伝学的結果とよく一致し、形態学的にも現生人類集団の起源を単一起源説で説明しうることを示唆する。 計測値によるサハラ砂漠以南のアフリカ集団とオーストラリア先住民の類似性は、その間に点在する少数民族、例えば、セイロン島のヴェッダ、ドラビダ族、アンダマン島先住民がオーストラリア先住民に比較的類似することから、アフリカを出て西アジアからおそらくはインド亜大陸を経て東南アジアへと拡散していった集団が形態学的にはさほど大きな変異を遂げずにオーストラリア大陸まで達したと仮定すると説明可能である。今後はこの仮説を、頭蓋形態と環境、生業形態など多角的な分析によって検証したい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Hanihara T: "Metric and nonmetric dental variations of major human populations" University of Oregon Anthropological Papers. 54. 173-200 (1998)
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[Publications] Hanihara T,Ishida H,and Dodo Y: "Os zygomaticum bipartitum ; Frequency distribution in major human populations" Journal of Anatomy. 192. 539-555 (1998)
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[Publications] Hanihara T,Ishida H,and Dodo Y: "Place of Hokkaido Ainu among circumpolar and other peoples in the world : A comparison of the frequency variation of discrete cranial traits" International Journal of Circumpolar Health. 57. 257-275 (1998)
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[Publications] Nara T,Hanihara T,Dodo Y and Vandermeersh: "Influence of the interproximal attrition of teeth on the formation of Neanderthal retromolar space" Anthropological Science. 106. 297-309 (1998)
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[Publications] 埴原恒彦: "縄文人はどこから来たか-形態から探る日本人の起源" 遺伝. 52(10). 42-47 (1998)
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[Publications] 佐宗亜衣子、埴原恒彦: "日本人女性の新しい身長推定式" 人類学雑誌. 106. 55-66 (1998)
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[Publications] 埴原恒彦: "仙台市央、原始「人類の進化と仙台」" 仙台市博物館 印刷中, (1999)