1997 Fiscal Year Annual Research Report
種分化にかかわる雌による求愛歌識別の分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
09839005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小熊 譲 筑波大学, 生物科学系, 教授 (90114074)
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Keywords | 種分化 / 求愛歌 / 種識別 / 遺伝学 / ショゥジョウバエ / 行動 |
Research Abstract |
雄の翅振動によって発せられる求愛歌の交尾成功における役割を明らかにするために、アナナスショウジョウバエ(以下アナナス)の雌またはパリド-サショウジョウバエ(以下パリド-サ)の雌と翅を切除した雄との交尾率を調べた。2種の雌はそれぞれ特異的な反応を示した。アナナス雌は翅のあるパリド-サ雄とのみ交尾せず、翅を切除すれば、すなわち求愛歌がなければ異種であるパリド-サ雄とも交尾した。一方、パリド-サ雌は翅のある同種雄とのみ交尾し、翅を切除すれば同種の雄とさえ交尾できなかった。求愛歌の受容器官である雌の触角端刺を切除した実験でも同様の傾向を示す結果が得られたことから、2種のどちらにおいても求愛歌は交尾の成功に重要な役割を果たすシグナルであることが明らかとなった。求愛歌を録音し、分析を試みたが、どのようなパラメーターが重要であるかを決定することはできなかったので、次年度以降の課題となった。 つぎに求愛歌の産生、および識別の遺伝的支配を明らかにするために2種の雑種および染色体置換系統と野生型との交尾率を調べた。F1雑種雄は野生型のアナナス雌と交尾しないが、パリド-サ雌とは良く交尾することから、パリド-サ雄の求愛歌産生が優性であると判断された。染色体分析の結果、劣性であるアナナス雄の求愛歌産生は第2染色体および第3染色体上の少なくとも2つ以上の因子により支配されており、パリド-サ雄のそれは第2染色体の支配を受けていた。雌による求愛歌の識別は逆にアナナス雌の形質が優性であった。染色体分析の結果から、第2染色体のみがこの種特異的な行動を支配しており、この雌の識別行動は交尾の最終的な成功にも大きく関与していることがわかった。 以上の実績から、本年度はほぼ計画通りの成果を得ることができた。
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[Publications] Doi,M.: "Behavioral response of males to major sex pheromone component,(Z,Z)-5,25-hentriacontadiene,of Drosophila ananassae females." J.Chem.Ecol.23(6). 2067-2078 (1997)
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[Publications] Sakai,T.: "Contribution by males to the intraspecific variation of the light dependency of mating in the Drosophila melanogaster species subgroup." Gene & Genetic System. 72(5). 269-274 (1997)
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[Publications] Sakai,T.: "Light-affected male following behavior is involved in light-dependent mating in Drosophila melangaster." Gene & Genetic System. 72(5). 275-281 (1997)
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[Publications] Tomaru,M.: "Effects of courtship song in inter-specific crosses among the psecies of the Drosophila auraria complex.J.Insect Behav." J.Insect Behav.(in press). (1998)