1997 Fiscal Year Annual Research Report
中国南西部における数種畑作物の遺伝的多様性に関する分子・細胞遺伝学的研究
Project/Area Number |
09839016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉野 熙道 岡山大学, 農学部, 助教授 (80033273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 鎌司 岡山大学, 農学部, 助教授 (40161096)
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Keywords | 中国南西部 / サトイモ / コムギ / 雑穀類 / 伝播ルート / アイソザイム / 春播性遺伝子 / 分子遺伝学的研究 |
Research Abstract |
1.サトイモに関する研究(Amaranthus spp.等の雑穀類他の研究に関しては、スペースの関係上割愛) (1)アイソザイム分析:雲南省と世界各地のサトイモ科6種、113系統について、13種の酵素のアイソザイム多型を分析し系統樹を作成した。交配・自殖後代も用いて22の遺伝子座における54の対立遺伝子を確定し、遺伝様式を明らかにした。連鎖分析により独立した4連鎖群を検出した。属間の差を基準としサトイモを18群に分類し、各地域間の関係を調べたところ、雲南省のサトイモが他の地域の系統と最も共通性が高く、サトイモの伝播に関して中国南西部が重要な地域であることが示唆された。3倍体の多系起源を裏付けるデータも得られた。 (2)核型分析とRFLP分析:4倍体のクワズイモ1系統は核型から異質4倍体ないし雑種起源の可能性が高く、中国産1系統はモノソミックであった。アイソザイム分析からネパール産2系統が属間雑種と推定された。これらの結果より、分染法よりもRAPD・RFLP・GISHの組合せの方が有効と考え、実験計画を見直している。 2.コムギに関する研究 (1)春播性遺伝子:秋播き栽培されている四川盆地では、日本と同様Vrn3型が適応しているのに対し、春播き栽培されているチベットや四川省山岳部ではVrn1型が多く、生態的分化が明らかになった。 (2)花粉不稔遺伝子およびRAPD多型:適応的に中立と考えられる両マーカーの地理的変異を解析した。チベットや新疆では遺伝的変異が大きいが、四川省、沿岸部、日本では西域には無い特殊なタイプに収斂する傾向が認められ、両地域間での遺伝的分化が示された。来年度はSCARマーカー開発を含むアイソザイム変異の解析、チベットのコムギの遺伝的多様解析に重点を置く。
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[Publications] 吉野熙道: "サトイモとその周辺-野生型・栽培型サトイモ、ハスイモ、サトイモ属とクワズイモ属の雑種など-" 植物の自然誌「プランタ」. 53. 12-18 (1997)
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[Publications] Nguyen,Viet Xuan: "サトイモにおけるアロザイム分析とこれによる系統分類" 育種学雑誌. 47 (別1). 129 (1997)
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[Publications] 落合俊紀: "ヤマノイモの葉緑体DNAプローブを用いたRFLP分析によるサトイモ近縁種の系統分類" 育種学雑誌. 47 (別1). 138 (1997)
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[Publications] Nguyen,Viet Xuan: "二倍体サトイモ(Colocasia esculenta Schott)のアイソザイム変異と遺伝" 育種学雑誌. 47 (別2). 148 (1997)
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[Publications] 落合俊紀: "RAPD法によるサトイモ近縁種の類縁関係" 育種学雑誌. 47 (別2). 149 (1997)
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[Publications] 末藤晴子: "PCR増幅葉緑体DNAの多型によるサトイモ科植物の類縁関係の推定" 育種学雑誌. 47 (別2). 150 (1997)
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[Publications] Nguyen,Viet Xuan: "Phylogenetic analyses of taro (Colocasia esculeanta (L.) Schott) and related species based on esterase isozymes." 岡山大学農学部学術報告. 87. 133-139 (1998)
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[Publications] Nguyen,Viet Xuan: "Karyotype Analyses on Diploid and Tetraploid of Alocasia odora (Roxb.) (in press)" AROIDEANA (Journal of the International Aroid Society). 20. (1998)
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[Publications] 宮嵜朋浩: "花粉不稔遺伝子の地理的分布から見たコムギ系統分化の解析 II." 育種学雑誌. 47 (別1). 146 (1997)
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[Publications] 松本一信: "東アジアのコムギにおけるRAPD多型と遺伝的分化" 育種学雑誌. 47 (別2). 146 (1997)
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[Publications] K.Iwaki: "Geographical variation of Vrn genotype in wheat caused by the selection for adaptability to winter coldness." Proc.9th Inter.Wheat Genetic.Symp.(Canada). (発売予定). (1998)
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[Publications] K.Kato: "Genetic differentiation among wheat landraces with diverse geographical origin and its characterization by molecular analysis." Proc.9th Inter.Wheat Genetic.Symp.(Canada). (発売予定). (1998)
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[Publications] 吉野熙道: "生物学に関する試験研究論叢のうち「中国と日本のサトイモの系統進化に関する総合的研究」" 両備?園記念財団(印刷中), (1998)