1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09839019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐々木 邦夫 高知大学, 理学部, 助教授 (10215717)
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Keywords | 魚類 / ニベ科 / ワラス線 / 分類学 |
Research Abstract |
ワラス線は世界最大の陸棚であるスンダ陸棚とニューギニアとオーストラリアの周辺に発達するサウル陸棚を分かつ境界線である.ワラス線が浅海性海産生物の種分化をうながす上で有効に働いているのであろうか.本研究では陸棚に生息する浅海性海産魚類であるニベ科魚類(スズキ目)を事例として取り上げ,ワラス線の障壁としての機能を評価しようというものである. 9年度はサウル陸棚に分布するニベ科魚類の分類学的な整理を行った.新たにオーストラリアの諸研究機関から本科魚類の標本を借用し,分類学的な検討を行った.特に,スンダ陸棚産の標本と厳密に比較検討した.その結果,9属22種の本科魚類がサウル陸棚に出現することが初めて明瞭にしめされた.新たに得られた知見は以下の通りである.コニベ属の2未記載種がオーストラリア北部の沿岸域に分布する.これらうち1種は非常に類似した種がスンダ陸棚に生息し,ワラス線による分離が遺伝的な交流を阻害したことが示唆される.過去,スンダ陸棚に産する種のシノニムないしは不明種とされてきたNibea leptolepis,Johnius australis,J.pacificusの3種はそれぞれ有効で,すべてサウル陸棚に固有の種である.これら3種のうちJ.pacificusはニューギニアの北岸にのみ出現し,分布パターンとして極めて特異である.総計22種の内訳は9種がスンダ陸棚との共通種で,13種がサウル陸棚の固有種である.
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