1998 Fiscal Year Annual Research Report
ケゼニゴケ自然集団における,複数の倍数体系列の進化についての研究
Project/Area Number |
09839031
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋山 弘之 姫路工業大学, 付置研究所, 助教授 (70211696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 富美夫 広島大学, 理学部, 助手 (60244290)
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Keywords | ケゼニゴケ / 倍数体 / アロザイム / rbcL-atpB |
Research Abstract |
ケゼニゴケDumortiera hirsutaは、ゼニゴケ目ゼニゴケ科に分類される苔類である。ケゼニゴケには、1倍体、2倍体、3倍体が知られており、それぞれがvar.hirsuta,var.nepalensis,そしてvar.hiroshima(=var.tatunoi)として分類学的に識別されている。核倍数体の分布と生育基物との関連性については、辰野による一連の研究でその詳細が明らかにされている。また彼は、日本には2種類の2倍体が存在すること、そして1,3倍体と同所的に存在する2倍体は、1倍体と3倍体の間の交雑によって生じたF1雑種であろうことを示唆している。 われわれの研究では、ケゼニゴケ2,3倍体がどのようにして1倍体植物から起源したかについて明らかにすることを主要な目的としている。今年度のわれわれの研究では、外部形態ならびにでんぷんゲル電気泳動法によるアロザイム多型の検出を主要な研究手段として解析を行っている。その結果、以下のことが明らかとなった。 1. ケゼニゴケ倍数体は強いfixed heterozygosityを示し、異なるゲノム構成をもつ1倍体間の交雑によって生じた異質倍数体であることが示唆される。 2. アジア広域でサンプリングを行った結果(42集団、約1200サンプル)、1倍体で3つ、2倍体で3つ、3倍体で2つの、遺伝的距離から判断する限り種レベルで異なり、かつ地域的なまとまりを示す実体を見出した。 3. 3倍体が中国(雲南省)、日本(屋久島以北)、ボルネオ島(キナバル山)、マレー半島(Gentinghighland)で新たに見つかった(このうち、中国と日本の3倍体は遺伝的距離が平均で0.07と低く、同一の実体である)。これらについて2倍体をいっしょにした解析を行ったところ、(日本2倍体+日本・中国3倍体)、(ボルネオ2倍体+ボルネオ3倍体)、(マレー半島3倍体+不明)という3つのペアーを見出した。このことから、少なくとも独立に3回、2倍体から3倍体への倍数化現象が過去に生じていることが示唆された。
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