1998 Fiscal Year Annual Research Report
後期中生代の環境変動の古生物学的・同位体地球科学的研究
Project/Area Number |
09839036
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平野 弘道 早稲田大学, 教育学部, 教授 (00037293)
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Keywords | 蝦夷累層群 / 下部蝦夷層群 / 海洋無酸素事変 / 安定炭素同位体比 |
Research Abstract |
後期中生代の白亜紀には3回の海洋無酸素事変が発生したことが知られている.しかし,これらのうちアプチアン期・アルビアン期の海洋無酸素事変についてはその地球規模の広がりの程度とタイミングが必ずしも詳にはなっていなかった.そこで本年度は昨年度に引き続きアプチアン期・アルビアン期の海洋無酸素事変に時代対象を絞り標記課題の研究を進めた. その結果,北海道夕張山地の麓,シューパロ川水系の2セクションに於いて上部バレミアン階から下部セノマニアン階までに計11回の安定炭素同位体比の正方向へのスパイク乃至シフトを検出することに成功した.この分析は既に数年がかりで継続しており,この度ほぼ完全に近いセクションからこの様な結果が得られ,これは北西太平洋地域では初めての成果である.これと同時並行的に進めた放散虫化石層序学的研究により,これらのスパイク乃至シフトの各々について詳しく国際対比を行い,地球規模で世界各地の研究成果と詳しい時代別に比較できる基礎を築いた.次に,これらの安定炭素同位体比の正方向の変動が,何に起因して生じたものかを明らかにするために,岩相観察,生痕相の観察,大型底生化石の産出の有無の点検,全有機炭素量分析,硫化物態硫黄含有量分析,抽出性有機物各種の指標分析,ビスノロホパンとホパン含有量分析等の各種バイオマーカー分析を実施し,これらの値及び相互の相関等を検討した. その結果,11回の正方向の変動のうち,4回が海中気候の無酸素化により生じたものであるという結論を導き出すことに成功した.併せて,蝦夷前弧海盆に於いては,他の7回の正方向の変動で示される環境変動は,海中地形または砕屑物供給量の多さに由来する貧酸素気候であることも概ね判明した.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 平野弘道: "下部蝦夷層群中のいわゆるオリストリス石灰岩体-特に芦別川水系三又沢に見られる岩体の特徴-" 早稲田大学教育学部学術研究. 46号. 1-6 (1998)
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[Publications] 平野弘道: "北海道北部,中川地域下部白亜系の放散虫化石層序" 早稲田大学教育学部学術研究. 46号. 19-32 (1998)