1997 Fiscal Year Annual Research Report
西欧における近代的機構の形成とそのわが国への導入についての研究
Project/Area Number |
09871002
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
中路 正恒 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (40188941)
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Keywords | J.B.ド・ラサール / 近代的学校 / 一斉授業 / 沈黙の義務 / 監視の義務 / 罰課(pensum)中心の処罰編成 / 友子制度 / 地鉱夫と渡り鉱夫 |
Research Abstract |
本年度は当初フランス国立図書館、および古文書館所蔵の一次資料の入手の目処が立っていなかったために、研究の重点をJ.B.ド・ラサールの『キリスト教学校の運営』のデジタル・テキスト作成と、その読解、分析に置いた。デジタル・テキストの作成については、アルバイトに依頼して入力作業を続けたが、手元にあるテキストに汚れ等が多く、スキャナーとocrを用いた作業にも困難が多く、結局、今年度の作業では約80%のデジタル化が完了したに止まった。この作業は、来年度も続け、早急に完成させるつもりである。 その読解、分析に関しては、近代的学校形成の功罪ともに把握するように努めたが、近代的学校において一斉授業が導入されると、その効率的な運営のために教室空間においては絶対的な沈黙が要求されることになる。そして、それを維持するための特殊近代的な賞罰のシステムの確立する。つまり、そこでは先ず、常時生徒を個人として析出するための監視制度が打ち立てられ、教師には例えば生徒の靴のはき方、机上の手の置き方にいたる、身体の細部にわたって施される監視の実行が義務づけられ、その監視制度に基づいて、生徒の観察・評価、そして賞と罰とが定めることが可能になるが、その罰においても、生徒の育成上の前進を助けることが第一に配慮されており、そこで、最も推奨される処罰として考案された罰課(pensum)を中心に、処罰が編成されていることが分析された。 他に、日本の近代化に関して、山形県の幸生(さちう)銅山で予備調査を行い、そこの元鉱夫から、昭和十年代の古川鉱業による近代的採掘においてさえ、鉱夫の相互補助システムである友子制度は健在であったことが教えられ、また地鉱夫と渡り鉱夫がどのようにして分化するのかを新たに教わることができた。
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