1997 Fiscal Year Annual Research Report
中国伝統文化において経学的歴史観の果たした文化統合的役割についての研究
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09871003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
関口 順 埼玉大学, 教養学部, 教授 (10107518)
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Keywords | 経学的歴史観 / 天下 / 国家 |
Research Abstract |
今年度は、本研究課題を遂行するために「経学的歴史観」という観念の形成に関係の深い「天下」という観念、及び「国家」または「国」という観念について考察し、一定の成果を得た。その一端はすでに『しにか』1997年12月号に発表した。 「天下」「国家」は経学的歴史観の時間空間的な枠組みを提供するものである。安部健夫の考察によれば、「天下」は、もともとは戦国時代の初期に出現した観念であり、一学派である儒家をこえた、いわば「中国」観念そのものの形成とかかわっている。この「天下」は、戦国時代の諸子の思想活動を通して理念化されるとともに、一方では過去へ遡って投影され、歴史の枠組みとして使われるようになる。たとえば、「堯は天下を治めた」のように。 「国家」の方は、そのようにして形成された理念的「天下」を統治するための、具体的な政治組織のことである。「国」はもともと、都市国家のような小規模な単位だったのに、「天下」観念の成立以来、天下を経綸統治する政治組織とされるようになった。それにともない、周はもともとの小規模な国から、王朝化して、「天下」を統治する「国家」と観念されるようになった。殷や夏、さらには虞と唐も、王朝つまり「国家」として考えられるようになった。 これらの「天下」「国家」の枠組みを用いて中国の歴史像を描いたのが、司馬遷の『史記』である。次年度は、この『史記』の分析を通して、経学的歴史観が中国の実際の政治社会面で果たした統合機能について考察したい。
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Research Products
(1 results)