1997 Fiscal Year Annual Research Report
1790年代から1880年代のアメリカ合衆国における太平洋像の変遷
Project/Area Number |
09871063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 泰生 東京大学, 教養学部附属 アメリカ研究資料センター, 助教授 (50194048)
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Keywords | 太平洋 / ハーマン・メルヴィル / 捕鯨 / ハワイ / 合衆国海軍 / 海洋学 / チャールズ・ウィルクス / ヘンリー・ワ-ズ・ロングフェロウ |
Research Abstract |
本年度は三カ年計画の最初の年に当たるため、とりあえず、基本文献の収集と問題の枠組みを掴む努力に重点的に時間を費やした。 第一に、基本文献の収集であるが、計画していたより一次文献資料が手に入りにくく、苦慮した。19世紀の詩人の多くについてはあまり個人の詩集も編まれておらず、William C.Bryant,Henry W.Longfellowなどの作品を部分的に分析し、その海洋像の抽出を試みるに留まった。彼らにとっては、太平洋、大洋、はまだ身近なものではなかったらしい。19世紀半ばになって多く出てくるCharles Wilkesらの航海記、探検記は複写によってそれを閲覧する機会を得たが、そこには、雄大な地球規模の世界観を映し出す太平洋像が頻出していた。それに匹敵する海洋像は、今年読んだ詩人たちの作品には発見できなかった。 第二に、二次資料に関しては、海軍関係の著書と外交史の研究書を収集し、世界の海を幾つかの海域に分割しその海域ごとの覇権の掌握を急いだ合衆国の海洋政策の歴史を調べ始めた。大洋ごとの艦隊編成の変遷をたどることで、太平洋がいつの時代に合衆国にとって「内なる」海と認識され始めたのか現在、考察中である。19世紀前半においては、「太平洋」が、現在の南太平洋を中心的に意味していたらしいことも明らかとなり、日本人の持っていた「太平洋」の認識との違いが浮き彫りになった。この点への理解を深めるために、日本人の海洋観を論じた書籍の収集も行った。購入書籍は備品とした。 以上の論考の一部は論文集『日本イメージの交錯-アジア・太平洋のトポス』(東京大学出版会、1997年)に含め刊行した。 最後となるが、年度の始めに計画していた、合衆国での研究計画のレビューは、準備をより整えたうえ、来年度以降に行うことにした。
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