1998 Fiscal Year Annual Research Report
1790年代から1880年代のアメリカ合衆国における太平洋像の変遷
Project/Area Number |
09871063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 泰生 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50194048)
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Keywords | 太平洋 / ハワイ / グルーゼンシュテルン / ガリー・オキヒロ / サルキソフ・コンスタンチン / フィリピン / 太平洋博覧会 / キャプテン・フック |
Research Abstract |
本年度は三カ年計画の第二年度に当たるため、基本図書の購入を続けると同時に、本研究の対象年代以降との連動を考慮した研究の視角も持つよう心掛けた。 まず、資料の購入であるが、本年は二次資料の購入を中心に行った.キャプテン・クックの航海をめぐる議論が近年盛んであるが、我が国でもその行動を、ヨーロッパ人による未知の海域の「発見」からヨーロッパ人の太平洋への「秩序付け」と見直す研究が出ている.しかし、その流行にのってクックらの航海を西洋の非西洋への支配の幕開けとのみ見なすことにも疑問がある。太平洋の歴史は西洋の非西洋への一方的な進入の歴史では無いはずであるし、また、西洋諸国の間でも、イギリス、アメリカ、ロシアなどの太平洋への進出が互いの太平洋イメージに影響を与えたことが予測されるからである.要するに、相互影響を視野に入れた重層的な分析の視覚が資料の読解に一層求められることが明らかになった. 以上の諸点を踏まえつつ、たとえば、時代は20世紀の初頭にかかるが、1905年、1909年、1915年と「太平洋」の名を冠した博覧会がアメリカ西海岸の諸都市でたて続けに開催されたことが二次資料からわかり、その博覧会における日本、フィリピンなどの展示に現れたアメリカ人の太平洋地域への視線が、それらの地域との接触を持つ前の同地域への彼らの視線とどう変わったのか追跡中である.また98年6月に来日したコーネル大学のガリー・オキヒロ教授、99年2月に東京大学アメリカ研究資料センターを訪問したロシア東洋学研究所のサルキソフ・コンスタンチン教授らは太平洋を挟む米露が自国の国土の伸張を弁明する基礎としていずれも19世紀に太平洋地域への地政学的興味を募らせたという指摘を行った。そうした視点からの太平洋への進出はいずれ衝突を迎えざるを得ないはずであり、その経緯を双方を連動させつつ明らかにする必要が今後あると思われる.
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Research Products
(1 results)