1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09871064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (20183246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅原 達郎 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (50151048)
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Keywords | 新石器時代 / 殷周時代 / 家畜 / 犠牲 / 卜骨 / 礼書 / 畜産 |
Research Abstract |
遺址出土の動物骨、動物犠牲坑、ト骨という考古資料からみると、新石器時代の家畜は第一にブタ、第二にイヌであり、犠牲もこの2種がおもに用いられていた。龍山時代にウシやヒツジが徐々に現れ、二里頭時代にそれは広範なひろがりをみせるが、ブタ優位の傾向はまだ変わっていない。しかし、殷代になると、急速にウシの比重が高まってくる。殷代にはト骨のほとんどがウシとなり、遺址出土の動物骨をみても、王都の鄭州二里岡遺址と安陽苗園北地遺址から出土したウシは過半を占めるようになる。このようなブタ優位からウシ優位への転換は二里岡期の王都に起こった。さらに、動物犠牲を用いた祭祀坑は、二里頭時代までは集落内の円形竇穴または不整形の灰坑で、単独で存在することが多いのにたいし、殷墟期の殷墟小屯や武官村北地では、整然と規則正しく配列された多数の長方形竪穴に大量の犠牲を埋める、きわめて大規模な祭祀がおこなわれている。このような犠牲を用いた祭祀の確立という点からみても、殷代が大きな転換点であったことがわかる。とくに殷墟において大家畜のウシやウマが惜しげもなく大量に犠牲にされ、その経済的損失はじつに膨大である。しかし、この膨大な富を蕩尽することによって、その祭主たる王の権威は逆に高まったにちがいない。大家畜のウシやウマは一般の庶民には容易に飼養できないために、支配者は国家機構を整備するなかでその飼養を開始した。礼書や殷墟ト辞には王自身がウシの飼養を省察したことが記されている。経済性の高いブタに代わって大家畜のウシやウマを威信財として尊重し、それを盛大に犠牲として用いた股王朝では、供犠のための畜産を開始し、祭主たる王が直接にそれを監督したのである。ブタ優位からウシ優位への転換、犠牲用動物の国家的畜産とその大規模な供犠のはじまりは、相互に密接な関連をもつものであり、殷周王朝を特徴づける国家的祭儀の成立を物語っている。
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Research Products
(2 results)