1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代女性作家による自己表現獲得の道程を文学史上に位置づける研究
Project/Area Number |
09871069
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 正子 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30198858)
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Keywords | 日本近代女性文学 / 岸田俊子(中島湘烟) / 清水紫琴 / ラ ロッシュ / ヴォーベーザー / 「太陽」 / 両性問題 / 金子筑水 |
Research Abstract |
本研究課題のもと、平成9年度には、<女性解放の先駆者>として自由民権期に活躍した岸田俊子=中島湘烟(1861〜1901)と紫琴・清水豊子(1868〜1933)の評論・小説に展開された女性論・女子教育論の具体的内容を確認。<同胞姉妹>に直接よびかけ書き手と読み手との間の連帯感を生じさせる文体や、<女>である自己の内面・真情を吐露する<私>語りの手法について中心に考察した。続く平成10年度には、ドイツの女性作家ラ ロッシュ(Sophie von La Roche,1730〜1807)を対象に、日独女性作家の比較研究を進めることに努めた。すなわち、『シュテルンハイム嬢の物語』(1771)によってドイツで初めて成功した女性作家とみなされているラ ロッシュの主張には、女子教育論をとおして女性解放論を展開するという方法や、<女>自身の女権意識の向上という<女>自身が<書く>ことの意義についての認識など、湘烟や紫琴らとの類縁性が確認されたのである。上記の研究を踏まえて、本年度は、近代フェミニズムの幕開け期の小説であるヴォーベーザー(Wilhelmine Karoline von Wobeser,1769〜1807)の『エリザ、またはあるべき女の姿』(1795)を参照し、日独の女性作家による<自己表現>獲得の成果を考究。また、女性作家による女性論を相対化するために、総合雑誌「太陽」の「博文館創業廿六周年紀念 増刊 近時之婦人問題」(大2・6 第19巻第9号)や「中央公論」の「臨時増刊 婦人問題號」(大2・7 第28巻第9号)などに掲載された抱月・島村滝太郎(1871〜1918)や筑水・金子馬治(1870〜1937)ら男性執筆者による評論を検討。前近代的な性差の秩序を墨守しようとする言説が氾濫するなかで、<新しい女>論議に終始せず、<兩性問題><社會問題>として<婦人問題>を議論する潮流が<男>の側にも生まれていることを確認した。
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