1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09871082
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松瀬 育子 神戸大学, 大学院・文化学研究科, 助手 (60283909)
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Keywords | 方向内在型移動述語 / 様態術語 / 移動主体 / 経路 / 対象 |
Research Abstract |
これまで日本語によるネワール語(ネパール、カトマンズ地方の固有語)研究は皆無に等しかったが、この事態を改めるべく、日本語の述語形式に依拠した形での語彙収集・分析に着手した。日本語の述語現象とネワール語の述語現象はかなりの類似性を示すが、どこまでが類似して、どこから違いを示すのかを、どのような点を基準にして意味記述するのかが問題となった。語順、述語が文末で重複する点、主体・対象の省略が可能な点、等の類似性を考慮して、記述する項目・手順をつぎのように設定した。 (1)ある事象の述語とそれに関わる主体・対象・場所等の表れかたの記述(話し手と事象の関係がどのような語彙に反映されるのかにも着目)、(2)どのような格関係を示すのかという文型の記述、(3)文型と意味の関係の記述 まず、基本的事象のうち、移動関係を表す語彙の収集から着手した。その結果、従来・出入り・発着・通過を表す述語では、移動主体の方向・経路(道筋)の他に、その事象が話し手に対してどのような方向を取るのかも語彙化されなければならないことが判明した。しかし、上下移動に関しては当てはまらない。これは、日本語においても「てくる・ていく」が主体の移動方向を表す動詞の後に出てき、話し手への方向を表す点で類似性を示すが、水平移動ではネワール語の方がさらにその制約が強く働き、ほぼ義務的に付加される点に相違があることも導き出された。
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