1998 Fiscal Year Annual Research Report
東・北・西アジアの諸言語における構成要素の膠着性に関する類型論的研究
Project/Area Number |
09871083
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
塚本 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (60207347)
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Keywords | 言語類型論 / 対照言語学 / 日本語 / 朝鮮語 / 語形成 / 統語現象 / 複合格助詞 / 文法化 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、入手した理論言語学・一般言語学関係の図書・論文によって、従来、提案されてきた理論的枠組みや考え方を検討し、入手した日本語・朝鮮語・トルコ語・モンゴル語・ツングース諸語などに関する参考書によって、記述されている範囲内でそれぞれの言語の事実を確認した。さらに、学生の協力で日本語に関するデータを収集し、本研究代表者の直感が効かない朝鮮語・トルコ語・モンゴル語などの言語については、インフォーマント調査を行ってデータを収集した。それらの収集されたデータは、学生の補助を得て整理した。 このような基礎作業に基づき、日本語と朝鮮語における語形成と統語現象の関わりについて、両言語を対照しながら、考察した。その結果、複合格助詞を含むいくつかの統語現象上で見出される両言語間の相違に適切な説明を与えるのも、自身のこれまでの研究成果である語形成に関する論を発展させ、統一的な捉え方をすることによって可能になることを明らかにした。統一的な捉え方というのは、日本語は単一の形式(構造)に複数の意味(機能)を対応させる傾向がより強く、朝鮮語は単一の形式(構造)に単一の意味(機能)を対応させる傾向がより強い、というものであるが、日本語では、「て」を伴った連用形の動詞が何か単一の連用格助詞に後続するといった形式は「駅に着いて食事をした。」のような単なる動詞としての機能と同時に、朝鮮語よりも動詞部分の意味の実質性を欠き、文法化が生じやすい分、その機能から派生した複合格助詞というもう一つの機能も担うことになる。それに対して、朝鮮語では、日本語と同様のその形式は日本語よりも動詞部分の意味の実質性が保持され、文法化が起こりにくいため、日本語ほど派生したまた別の機能を担うまでに至らないのである。なお、トルコ語やモンゴル語については、以上の研究成果と照らし合わせながら、現在、分析・考察中である。
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Research Products
(1 results)