1997 Fiscal Year Annual Research Report
環境的に持続可能なエネルギーシステムへの転換に対する規制緩和の可能性と限界
Project/Area Number |
09872013
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大山 耕輔 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (40185400)
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Keywords | 持続可能性 / エネルギーシステム / エネルギー転換政策 / 規制緩和 / 新エネ / 省エネ / 原子力 |
Research Abstract |
1年目にあたる今年度は、先進諸国のエネルギー転換政策の実態に関する基礎的な文献・資料を幅広く収集しデータベース化するとともに、有識者や関係者にインタビューする作業を中心に研究を進めた。とくに1997年12月に地球温暖化防止京都会議が開かれ、2008〜12年の温暖化ガスを90年に比べ、日本6%、米国7%、EU8%へ削減することに決まったことは特筆すべき出来事であった。そのことは、省エネ・新エネ・原子力の3つのエネルギー利用を拡大したり、化石エネルギー利用を減らしたり、それが無理なら石炭や石油ではなく天然ガスに切り替えるといったエネルギー転換政策の重要性を高めている。 だが、各国レベルの転換政策については、EUの再生可能エネルギー導入行動計画が明らかになったことを除いて、十分な資料を収集できていない。また、規制緩和をはじめとする政策手段がエネルギー転換にどれほどの効果があるのかもまだ不十分である。今後の課題である。 今年度の特徴の一つは、エネルギーの「現場」を見てきたことであろう。97年夏に世界一のサイトとなった柏崎・刈羽原発を見学したり、原子力産業会議が主催したシンポジウムや懇親会に参加したり、住民投票の行われた巻町に立ち寄ったりして、原子力のおかれたさまざまな状況を把握することができた。また、京都会議と同じ時期に京都で行われた新エネ・省エネシンポジウムとEco Japan 97に参加できて、エネルギー転換の諸問題について貴重な情報や資料を収集することができた。またもう一つは、筑波大学のTARA公共政策プロジェクトや、原子力安全システム研究所の新エネルギーワークショップ、東京大学の日本原電公開寄付講座での講演等に参加することにより、エネルギー転換問題をとらえる視点をより洗練させることができた。 以上の成果をもとに、来年度に向けて明らかになった課題に今後取り組んでゆきたいと考えている。
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[Publications] 大山 耕輔: "「エネルギー政策におけるガソリンの輸入規制緩和」" 『日本における規制緩和をどう進めるべきか』((財)統計研究会). 121-131 (1997)
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[Publications] Kosuke Oyama: "“Deregulation of the Gasoline import in Japan's Overall Energy Policy,"" The Implications for Japanese Deregulation of U.S.Regulatory Reform (Tokyo The Institute of Statistical Research). 143-144 (1997)
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[Publications] 大山 耕輔: "「エネルギー政策への政策科学的アプローチ」" 宮川公男編著『政策科学の新展開』(東洋経済新報社). 183-203 (1997)