1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09872016
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
李 景みん 札幌大学, 文化学部, 教授 (10220790)
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Keywords | 李承晩 / 民族運動 / 改革運動 / 独立精神 / 西洋列強 / 大韓帝国 |
Research Abstract |
李承晩は、1800年代の後半に崩壊直前の朝鮮の封建社会の改革運動に参加することで朝鮮民族運動との関わりをもった。列強の侵略を目の当たりにして朝鮮国の独立を守ると同時に社会の近代化を成し遂げようとする政治結社・独立協会の会員となり、街頭での大衆集会で若手の活動家として頭角を顕わした。だが、1898年12月に独立協会が守旧派の政府によって強制的に解散させられ、その指導者多数が逮捕される状況で、李承晩も逮捕された。李承晩の著者・『独立精神』は、李承晩が29歳のとき、牢屋にいて、日露戦争の勃発を目の当たりにして大韓帝国の先行きが一層心配であり、鬱憤を堪えられずに、彼は筆を執ったという。 本の内容は、民衆の覚醒が如何に大事かを指摘し、独立、民権、共和主義、憲法、専制などずれもタブー視されていたテーマを取り上げている。日本については西洋の文明を受け入れて開化・発展していると好意的に見ている。例えば、「腹切り」を取り上げて、それは誉められない行動だが、他人に負けず嫌いな性格は見習うべきだと指摘する。日本は黒船の到来で西洋の進んだ文明を悟り、留学生を派遣して西洋の制度を学んでいると明治維新を評価して、「日本はすべてが変わっているのだ!」と、朝鮮に開国を迫る日本を理解して、「無知な隣国を極力開化」させ、協力して西洋列強の侵略から保全せんとしたことに「朝鮮の臣民は感謝すべきこと」ではないか。日朝修好条規に言及しては、「朝鮮が独立権利を初めて回復したことであり、めでたいこと」であるにもかかわらず、無知蒙昧な朝鮮側は「独立の尊さを知らず、中国を裏切ることは道理に反する」と対応したと支配層の時代遅れの感覚を嘆いている。 しかし李承晩は、その後の日本は変わったと指摘し、いずれ朝鮮が日本の植民地となることを予見する。日本は、日清、日露戦争を経て朝鮮における在留日本人の経済的要求が高揚していくに従って、朝鮮の内政に対する干渉も強くなっていくが、朝鮮政府は何ら有効な措置を採ろうとしないとその対応を糾弾する。李承晩は、朝鮮人の国民性について触れて、「中国人のふくよかなところと日本人の強悪なところ」をそれぞれ均等にもっている。頑固な質朴な性格もあり、聡明で敏捷なところがあるのでしかるべき教育を与え、良い方向へと導けば、この東洋において富強な国造りが十分可能だと指摘する。確かに朝鮮民衆が世界の動向に「無知」ではあるが、民衆に対する期待は強く、たとえどんな状況にあっても「民衆が悟っていれば」、世界の公論の助けを得られようと結んでいる。
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Research Products
(2 results)