1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本の近代化と華僑・印僑ネットワークとの相互連関についての歴史的分析
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09873009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
籠谷 直人 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70185734)
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Keywords | 地域主義 / 華僑 / 印僑 / ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、「国民国家」・「国民経済」という「公式」的な枠組の下位概念として、「地域」の連鎖をおさえ、1930年代に問題とされたるようになる「非公式」的な「地域主義」とそれを支えるネットワークの存在の歴史的根拠を、日本史の立場から考察することにある。日本において「地域主義」が議論されるようになったのは、1930年代の「満州国」創設に前後した時代であった。欧米帝国主義の存在と、1920年代以降の中国のナショナリズムの台頭に対抗する必要から、国家を越える新しいアジア国際秩序原理として地域主義が求められた。「満豪」・「大東亜」という表現を採りながら、国家の下位概念であるはずの「地域」が、地政学(geopolitics)を援用しながら20年代以降の内外の「国家主義」を超克する召的で動員された。それゆえ敗戦後日本は、戦後民主主義を希求する形で改めて「国家主義」に回帰し、こうした地域主義の形成を負の側面として、考察の対象外に置いたと言える。 地域主義が主張された30年代において注目されたのが華僑、印僑の存在であった。彼らがナショナリズムを意識した排日運動は日本の驚異であったが、同時に地域主義の構成員として彼らを取り込む必要が彼らの存在への注視となった。満鉄・東亜研究所の調査報告が多く刊行された所以である。戦後日本の「国家主義」への回帰は、歴史学においても日本の「国民国家・経済」形成の普遍性と特殊性を後者に即して議論することに結果したが、他方で国家のような「纏まり」を持たない歴史的事象・主体を考察対象外とした。国家の後援をうけない経済主体である彼らの存在は近代化を指向することのない「停滞」性のなかで議論されるものの、環海の都市間にひろがる非日本人通商網の日本に与えた影響は等閑視されてきたと言える。
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Research Products
(1 results)