1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本の近代化と華僑・印僑ネットワークとの相互連関についての歴史的分析
Project/Area Number |
09873009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
籠谷 直人 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70185734)
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Keywords | 華僑 / 印僑 / 通商網 |
Research Abstract |
研究代表者の推計によれば、神戸港における華僑の対東南アジア向け輸出は1929年に7500万円を記録し、これは神戸港の対東南アジア全輸出額の7割を占めた。30年代には大不況や欧米のブロック政策の影響もあり、31年には2900万円(神戸港の対東南アジア輸出額において43%を占める-以下同様)に減少するが、36年には5500万円に回復する(37%)。他方、在神戸印僑の輸出額は29年には1680万円(神戸港の対英領インド輸出額の33%-以下同様)であり、32年には1288万円(21%)へと減少するが、36年には7865万円(80%)へと急激に回復する。36年の在神戸華僑/印僑の輸出額は神戸港の対東南アジア/英領インド輸出全額の約半分を占めたことになる。1929年の輸出額を基準(100)と考えれば、36年に華僑の輸出額は73にまで回復し、印僑のそれは466に拡大した。在神戸印僑の積極的な取引への進出が確認できる。また各1社当りの資本金を検討すると、在神戸華僑のそれは1925年5万7000円、32年9万5000円、38年17万3000円へと拡大基調にあるのに対して、印僑の場合は各年において20万円、8万4000円、7万円へと減少する。在神戸印僑は30年代を通して、1社当りの資本金を低下させながら取引額をふやしたことになり、これは30年代に比較的小さな資本金規模の印僑が新規に参入し、日本製品の取引に積極化したことを示していた。他方、在神戸華僑は20年代初頭からのメンバーが着実に規模を拡大させ、30年代に取引額を回復させたことを示唆していた。印僑は比較的流動的であり、状況の変化に敏感に反応する側面を有していたと考えられる。大不況と植民地経済のブロック化の時代と認識されてきた1930年代において、アジア通商網は崩壊するものと認識されてきたが、条件の変化に敏感に反応する華僑、印僑の通商活動によって日本製品のアジア市場における取引は停滞することなく、むしろ拡大したのであった。2年間にわたる研究成果は、講座『世界歴史-移動と交流』岩波書店、1999年近刊で発表する予定である。
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Research Products
(1 results)