1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09874017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 幸夫 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (20011637)
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Keywords | 量子逆元 / ラック / レフシェツ・ファイバー空間 |
Research Abstract |
「量子逆元」は自由群の逆元をとる操作に高次の非可換性を組み込んだようなものである。研究代表者は,種数2のレフシェツ・ファイバー空間の分類を目指す途中でこのような操作に遭遇した。本研究課題を申請した時点では,量子逆元の計算法は図形的なものだけであった。すなわち,自由群の元を有限個の点を除いた平面上の曲線で表しておき,それに図形的操作を施すことにより量子逆元を計算していたのである。 その後,東京大学の葉広和夫氏,大阪市立大学の鎌田聖一氏,関西学院大学の吉川克之氏達の協力を得て,与えられた自由群の元を表す語から出発する台数的計算法が確立した。さらに,量子逆元の現れる自然な枠組みを追求した結果,FennとRourkeにより,「ラック」と名づけられた数学的対象に行き当たった。これは右側自己分配則を満たす2項演算を伴った一種の代数系である。これまで,ラックはいろいろな数学者により,さまざまな名前で何度も定義されているが,最も古い文献は高崎光久氏の論文(東北数学雑誌、1943)である。そこでは,高崎氏はラックを「圭」と呼んでいる。 有限個(2個以上)の点を除いた球面または平面の上で,除かれた点を両端とする単純曲線の(両端を止めた)イソトピー類全体の集合には,それぞれ自然にラックの構造が入る。そして,これらのラックを,自由群を用いて代数的に表現するとき,非常に自然な形で量子逆元が現れて来ることがわかった。現在,これらのラックの代数的表現を計算中であり,計算が完了した時点で,葉広,鎌田,吉川,松本4人の共著論文として発表する予定である。
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Research Products
(1 results)