1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09874023
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊藤 仁一 熊本大学, 教育学部, 助教授 (20193493)
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Keywords | 多面体 / リーマン多様体 / 曲率 / Chern-Lashofの定理 / Cohn-Vossenの不等式 / 離散ラブラシアン / Bonnesenの不等式 |
Research Abstract |
リーマン幾何の結果や問題が多面体でどのようになっているのかを調べることを目的とし、今後、多面体の幾何がリーマン幾何の研究方法の1つとして確立していくことを目指すものである。 外在的な曲率を用いる研究: 3次元ユークリッド空間内の多面体に内在的曲率と外在的曲率との2つが自然に定義され、ある仮定の下では等しく (多面体のGaussの驚異の定理)、そうでない病的な例も多面体では存在する。一般次元のとき余次元が1の多面体では、同様の結果が昨年度から得られていたが、余次元も一般の場合にも外在的曲率が定義でき、極めて複雑となるが、ある仮定の下では、内在的曲率と一致することが分かった。更に、外在的曲率の絶対値にあたるものの定義も可能で、その和が、ベッチ数の和で下から押さえられ、最小値をあたえるものは、tightであることも分かった(多面体のChern-Lashof型定理)。現在、論文にまとめている所である。また、非コンパクトのChern-Lashof型定理を多面体の場合に示し、滑らかな多様体の幾何学に貢献することが期待され、研究の継続が望まれる。 内在的な曲率のみを用いる研究: 多面体の場合、内在的曲率を用いて一般次元のGauss-Bonnet型定理(曲率の和がオイラー数と一致する)は容易に得られる。そこで、一般次元のCohn-Vossen型不等式(非コンパクトでは、曲率の和がオイラー数より小)の成立が期待される。そのために、昨年度得られた多面体のBonnesen型不等式での考察が重要であることが分かったが、残念ながら今一歩の所であり、このままの方向で考察を続けることが望まれる。滑らかな場合には2次元以外ではCohn-Vossen型不等式は未解決であるため、極めて興味深く、今後に期待される。また、2次元複体の場合には、全曲率の存在に対して2種類の定義が自然に考えられ、リーマン幾何的な定義ではCohn-Vossen型不等式を得、複体的な定義では反例が見つかった。 上記以外にも、ラプラシアンの多面体的離散化や多面体のBonnesen型不等式や最小跡、空間グラフの全曲率の研究等、今後の発展が望まれるものが多く、萌芽的研究として意義深いものであったと思われる。
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Research Products
(1 results)