1998 Fiscal Year Annual Research Report
曲げエネルギーを極小にする閉曲面と赤血球膜の形態変換
Project/Area Number |
09874026
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 泉 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (40154744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長澤 壮之 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (70202223)
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Keywords | ウィルモア汎函数 / 平均曲率 / 曲げエネルギー / 分岐 / 安定性 |
Research Abstract |
本研究は赤血球の形態のモデルとして知られているある特別な性質をもった閉曲面を数学的に厳密に構成することを目的に行なわれた.この曲面は,与えられた表面積をもち,それが囲む領域が指定された体積をもつような閉曲面の中で平均曲率の平方積分を極小にするようなものである.物理的には平均曲率の平方積分は弾性膜のもつ曲げエネルギーを表している.実際には,膜の裏表の構造の違いを考慮に入れた自発的曲率の効果を含むエネルギー汎函数を極小にする曲面を考察した. 前年度の研究では分岐理論を適用して球面に近い回転面の範囲でエネルギー汎函数の臨界点となる曲面をすべて構成した.今年度はその安定性についての考察を中心に研究を展開した.このため,エネルギー汎函数の第二変分を長い計算の末に求めた.その結果,自発的曲率がある値よりも(1)大きいとき,縦長の曲面が安定で横長の曲面が不安定となり,(2)小さいとき,逆に縦長の曲面が不安定で横長の曲面が安定となることが判明した. 安定性の考察のためには,制約条件を充たしつつ曲面を変形していく必要があり,従って,問題となる曲面がどの程度そのような変形を許容するかを明らかにすることによって厳密な安定性の判定が可能になった. 以上の研究成果は間もなく論文として公表する予定であるが,本研究の成果報告と関連分野の研究者間の情報交換とを兼ねて,研究集会「曲率と形態変換」を開催した. 厳密な数学として研究を推進するにはまだ枠組みや理論が未整備な研究対象を取り上げて,数値的方法なども含めて基礎的なデータを蓄積していくことを目標に始められたものであるが,結果的には,数学的に厳密な部分の研究が予想外に大きく進展した.球面から大きく離れた曲面については今後の魅力的な研究課題として残されている.
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