1997 Fiscal Year Annual Research Report
奈良盆地東縁部における古墳時代前後の地質・地形環境と土地利用の変遷
Project/Area Number |
09874097
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高濱 信行 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 助教授 (20018948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 昌二 新潟大学, 人文学部, 教授 (30036470)
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Keywords | 古墳時代 / 巻向遺跡 / 地盤環境 / 災害 / 土石流 |
Research Abstract |
本研究は,奈良盆地東縁部で古墳時代を中心とした縄文時代以後の地盤変動の歴史を調査し,これと当時の人々の生活・生産の場としての地盤環境について考察することを目的とする. 大和政権誕生の地とされる奈良盆地東縁部は巨大古墳群をはじめ,巻向など古くからの大規模重要遺跡が多く分布している.これらの遺跡が成立・廃絶した自然環境,とくに地盤・地質環境を解明することは,現代の土地利用・国土開発の計画にあたって多くの教訓と指針が期待できる.今年度は,共同研究者らとともに巻向遺跡を中心とした調査で次の成果をえた. 1.古墳時代前期の西暦200〜350年頃に存在した日本最初の「都市」といわれる巻向遺跡は,奈良盆地の東側領家片麻若山地からの土石流扇状地とその砂地盤を生活面として成立している.このような地形・地盤は,利水・排水の面,また建造物の支持地盤として生活と「都市」の建設に有利な地盤環境の側面をもったものと解釈できる.さらにこの遺跡の廃絶にあたっては,自然環境の側面からみた場合に,当時舟運に利用されていた河川を小規模な土石流が埋積したことが大きな影響をもった可能性が高い. 2.以上の点は土石流という自然現象が,巻向遺跡の成立基盤を提供する一方で,土砂災害をもたらすことによって遺跡を廃絶に導くという,『功罪2面性』をもつことを意味するものであろう.つまり自然現象・環境問題の検討は歴史的・総合的にとらえる視点が重要であることを示す具体的事例である. 3.次年度は巻向遺跡を中心に,さらに時空分布をひろげた調査を実施する予定である.
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[Publications] 大塚富男・高浜信行ほか: "群馬県鳥川中流域のテフラ層中にみられる液状化現象とその意義" 第四紀研究. 36巻2号. 123-136 (1997)
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[Publications] 小林昌二: "小規模〓墾田と古代的開発" 条里制研究. 13号. 30-41 (1997)
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[Publications] 小林昌二: "軍符と召文" 歴史評論. 574号. 3-15 (1998)