Research Abstract |
希土類イオンの発光は固体レーザーなど,発光材料として利用されれている。これらを溶液で実現するための基礎研究を行った。ここでの基礎研究の内容は有機溶液中で高い発光収量を示す系を見出すことである。 1.Nd錯体 無放射遷移の理論を基礎に分子設計し,Nd^<3+>錯体に関し,有機溶媒中で発光を観測することに成功していが,今回は,配位子として重水素化した4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-pentadecafluoro-1-pentafluorophenyl-1-3-decanedioneを用いた。Nd錯体としては初めて光増感の発光を観測することができた。量子効率は1-2%であった。 2.Yb(HFA-D)_3錯体 Nd^<3+>と同じ錯体の構造にするだけでも,高い発光収量を示すと予想し,重水素化したhexafluoroacetylacetonato(HFA)を配位子としたYb(HFA-D)_3錯体を合成した。Nd(HFA-D)_3錯体の場合と同様な条件で測定した。Nd(HFA-D)_3錯体に比べ,高い発光収量,7%を得た。発光ピークは985nm(^4F_<7/2>→^4F_<5/2>)で,その半値幅は63nmであった。DMSO-d6溶媒の場合,発光寿命(τ_M)は66μsであった。これまでに報告されている溶液中,Yb^<3+>イオンに比べて10倍以上の長寿命を得た。隣を含む溶媒(PO(OCH_3)_3)で,比較的長寿命(27μs)であったことは特筆できる。 Yb(HFA-D)_3がNd(HFA-D)_3に比べ発光収量が高い原因は無放射遷移の道筋が少ないこと,エネルギーギャップが大きいことが原因であろう。DMSO-d6:Yb(HFA-D)_3の発光寿命(66μs)は,DMSO-d6:Yb(HFA-H)_3(42μs)の約1.5倍,DMSO:Yb(HFA-D)3(22μs)の3倍となった。これらはC-D結合の効果を明瞭に示している。
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