1997 Fiscal Year Annual Research Report
緑藻ボルボックス目の光合成の細胞生理学的特性に着目した分子形態学的研究
Project/Area Number |
09874174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40250104)
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Keywords | ピレノイド / CO_2濃縮機構 / Chloromonas / 葉緑体 / 緑藻植物 / 形態学 / 光合成 / Rubisco |
Research Abstract |
世界各地の藻類カルチャーコレクションのChlorogoniumまたはChloromonasと同定された培養株31株を取り寄せて各株のピレノイドに着目した葉緑体等の形態学的特徴を培養条件下で明らかにした。更にChloromonas株の中から、光学顕微鏡と透過型電顕でピレノイド構造のないことが確認され、免疫電顕で、葉緑体内にRubiscoの集中した部位が認められなかった、Cr.serbinowii UTEX492、Cr.rosae UTEX1337、Cr.clatharata UTEX1970、Cr.rosae SAG26.90、Cr.palmelloides SAG32.86でCO_2濃縮機構の検討を行った。すなわち、異なるCO_2条件で生育させた細胞でCO_2に対する親和性とCA活性を調査し、さらに細胞内に蓄積された無機炭素の濃度を調査した。その結果、上記5株は2つのタイプに分かれた。Cr.serbinowii UTEX492とCr.rosae UTEX1337では、低CO_2細胞で高CO_2細胞に比べ、細胞のCO_2に対する親和性が高く、低CO_2細胞でCA活性が誘導されており、細胞内に無機炭素が蓄積されていた。従って、これらの株ではピレノイドがないにもかかわらず、CO_2濃縮機構を保持していることが明らかになった。一方、Cr.clatharata UTEX1970、Cr.rosae SAG26.90、Cr.palmelloides SAG32.86では、CO_2に対する親和性は、高CO_2細胞でも低CO_2細胞でも低く、CA活性は高CO_2細胞と低CO_2細胞の間で差が認められず、細胞内に無機炭素が蓄積されていなかった。従ってこれらは地衣類のピレノイドのない共生藻と同様、CO_2濃縮機構を持たないことが判明した。ピレノイドがないにもかかわらずCO_2濃縮機構を保持する藻類の存在は、これが初めての報告である。
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[Publications] Morita E., Abe,T., Tsuzuki,M., Fujiwara,S., Sato,N., Hirata,A., Sonoike,K. and Nozaki,H.: "Presence of the CO2-concentrating mechanism in some species of the pyrenoid-less algal genus Chloromonas (Volvocales,Chlorophyta)" Planta. (印刷中). (1998)