1997 Fiscal Year Annual Research Report
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09875226
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 勇 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80023266)
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Keywords | イリジウム錯体 / 炭素-炭素結合形成 / アルドール型カップリング / エノールシリルエーテル / ジシリルイリジウム錯体 |
Research Abstract |
本研究では、これまで触媒としての有用性が余り報告されていないイリジウム錯体に焦点を合わせ、イリジウム錯体に特有の科学的性質を明らかにするとともに、炭素-炭素結合形成のための基本的コンセプトおよび作業仮説の樹立ならびに新しい触媒反応の開発を目的とした。そこで、いくつかの試行錯誤的な探索を行った結果、[Ir(COD)(PPh_3)_2]PF_6を触媒前駆体としたアリルアルコール類とベンジルアルコール類とからのエーテル形成反応を見出し、この時の真の触媒前駆体はイリジウムヒドリド錯体であることを明らかにした。このタイプのエーテル結合形成は見かけ上は酸触媒による方法と同一になるため、イリジウムヒドリド錯体がブレンステッド酸として挙動し得ることを示唆している。この予測はジヒドリド錯体とエノールシリルエーテルとの化学量論的反応で、エノールシリルエーテルと当モル量のアセトンを放出し、ジシリルイリジウム種が生成する事実からも裏付けられた。更に、ここで生成するジシリルイリジウム錯体はエノールシリルエーテルとアセタールまたはアルデヒド類とのアルドール型カップリングおよびアリルアルコール類またはアリルアセテート類に対する求核置換反応に対してきわめて高活性な触媒となることを見出した。また、これらの反応ではカチオン錯体の対アニオン部の選択がきわめて重要であることも明らかにし、イリジウム錯体を炭素-炭素結合形成のための触媒とする際の強力なガイドラインを提供することになった。
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