1997 Fiscal Year Annual Research Report
経口シグナル応答における内分泌系および神経系の機能
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09876033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 忠 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科学科, 教授 (50011937)
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Keywords | 経口シグナル / コレシストキニン / 必須アミノ酸欠乏 |
Research Abstract |
食品成分は生体の構成成分として機能する他に、免疫、神経・内分泌系など高次生体統御系に作用する「経口シグナル」としても機能することが明らかにされつつある。経口シグナルに対する生体応答の1例として、必須アミノ酸を一種類欠く食餌を与えると、動物の食欲が急速に低下する現象が知られており、その応答の第一の場は腸管であると推測されている。本研究では、この機構に関して分子内分泌学的解析を行うため、まず腸管で発現している内分泌因子である神経ペプチドY、グルカゴン様ペプチド、ガストリン、コレシストキニン(CCK)、レプチンレセプターのcDNAをクローン化した。次に必須アミノ酸であるリジン、メチオニン、トリプトファンをそれぞれ欠乏させた食餌を1時間投与後のラットの小腸におけるCCK遺伝子の発現をアミノ酸完全食投与ラットと比較した。その結果、何れの欠乏食でもCCK遺伝子発現が低下すること、特にトリプトファンでその減少が大きいことが明らかとなった。このことから、必須アミノ酸欠乏の関知とCCKの分泌には関連がある可能性が示された。また、必須アミノ酸欠乏食を一週間与えたラット脂肪組織におけるレプチンの遺伝子発現を調べた。その結果、欠乏食の摂取によりレプチン遺伝子発現量は低下することが明らかとなった。レプチンは視床下部に働いて食欲を抑制することが知られているが、アミノ酸欠乏時の食欲低下はレプチンが原因ではなく、摂食量の低下がレプチンの遺伝子発現の低下を引き起こしていると考えられる。 さらにトリプトファン欠乏時における小腸内のペプチドをアミノ酸完全食と比較した。その結果、トリプトファン欠乏時に増加していると考えられるペプチドを見出した。これについては現在単離、精製を行っている。
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